彩り溢れる光の芸術 オオサカステンドグラスマニア 彩り溢れる光の芸術 オオサカステンドグラスマニア

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公開日2026.09.10

紹介してくれるマニアさん

レトロさんぽ堤じゅりさん

年間300以上のレトロスポットを、着物や古着で巡るクリエイター。SNSの総フォロワー数は約13万人で、建築や純喫茶、ホテルを中心に、レトロの楽しみ方を発信する。東京都内&近郊にあるおすすめの名建築21か所を紹介する『キュン!するレトロ建築 食べる 浸る 泊まる』(主婦と生活社)も好評発売中。
https://www.instagram.com/retro_sanpo_/

ガラスが奏でる、ノスタルジックな光の世界

歴史好きな父の影響で、小さな頃からレトロな風景は私にとって身近な存在。そんな私が、「レトロさんぽ」のアカウントを始めたのは、原宿駅(東京都渋谷区)の木造駅舎が解体されたことがきっかけです。歴史的価値のある建造物が、時代の流れで淘汰されゆく姿を見て、古きよきものを守りたいと、SNSでレトロの魅力を発信することにしました。
私はレトロの中でも、明治から昭和初期にかけての、上品でクラシカルな雰囲気を漂わせる建築物が好きです。その頃の建物は、細部にまで美しい装飾が施されているものが多く、 隅々まで目を凝らしながら歩いていると、まるで宝探しをしているような気分になります。
ステンドグラスも、レトロ建築でよくみられる装飾の一つ。静寂の中できらめく姿は、だれもが美しいと思えるものなので、レトロ建築に興味がある方は、まずはステンドグラスから注目してみるのもおすすめです。

光を通してきらめく姿がステンドグラスの醍醐味

今回のリストに選ばせていただいたのは、公共施設や教会、商業施設などの13か所。多彩なシチュエーションで、ステンドグラスの美しさを楽しんでいただけるような選定を心がけました。
ステンドグラスの醍醐味といえば、なんといっても、色とりどりのガラスを通して、おだやかでやさしい光が放たれている姿です。見る時間によって、光の差し込み方が変わるので、その瞬間にしか目にすることができない表情を楽しんでいただけたらと思います。

ステンドグラスにとどまらない魅力も体感しよう

ステンドグラスめぐりを楽しむときは、ステンドグラスに注目するのはもちろんですが、飲食店なら飲食もする、図書館なら本棚ものぞいてみる、休憩スペースや憩いの場であればちょっと休んでみるというように、その施設や場所を訪れる本来の目的も、併せて体験していただきたいですね。その空間をトータルで体感することで、醸しだされる世界観に、より深く浸れるのではないかと思います。
また今回のリストの中には、通常は一般の方への開放は行っておらず、毎年秋の「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(イケフェス大阪)」で見学の機会を設けているスポットもあります。いずれも、歴史的価値のある建物ばかりなので、ぜひステンドグラス以外の意匠にも注目して、レトロな魅力に触れてみてくださいね。

※イケフェス大阪で見学できるスポットは、事前申し込みが必要な場合もあります。詳しくはイケフェス大阪のホームページ(https://ikenchiku.jp/)をご確認ください。

※2026年9月10日時点の情報です。
目次

「証券の街」の歴史が息づく、円形エントランスのステンドグラス

上質な光を放つアールデコ様式のデザイン。床や通気口にも注目

五代友厚の像とともに、北浜エリアのランドマークとして親しまれている「大阪取引所」と書かれたビル。正式名称は「大阪証券取引所ビル」で、文字通り、「証券の街・北浜」を象徴する建物です。
始まりは1878(明治11)年。五代友厚らを発起人として、この地に「大阪株式取引所」が開設されました。その後、資本主義経済の発展に伴い、1935(昭和10)年に「市場館」が竣工。かつての株式取引では、証券会社が発注する際に「手サイン」が使われており、市場館の「立会場」には、日々2,000 人を超える取引のプロフェッショナルが集い、熱気あふれるやりとりが展開されていました。
そして1999(平成11)年になると、証券取引の完全システム化により、立会場が閉鎖。「この体育館のような広いスペースを持つ歴史ある建物を、どう利用すべきか」を検討するため、地域の人たちと有識者等で構成された委員会が発足しました。
堺筋と土佐堀通が交差する、北浜1交差点に建つ大阪証券取引所ビル。
かつての立会場の様子。連日、白熱した取引が行われていた(写真提供:大阪取引所)。
委員会での検討を経て、2004(平成16)年に竣工したのが現在の大阪証券取引所ビル。市場館の歴史を継承すべく、アール・デコ様式の円形エントランスホールを保存しながら、地上24階・地下2階のオフィスビルへと生まれ変わりました。
ところで同ビルは「大阪取引所」と掲げられていることから、取引所の関係者以外は入館できないイメージを持つ 方もいらっしゃるのでは?実はOsaka Metro北浜駅1-B号出口と直結する同ビルは、大阪取引所以外の企業やクリニックなども入居しており、3階から地下1階の飲食店などは、一般の人も気軽に利用することができます。
同ビルの前に立つ「五代友厚公像」は、「銅像 マニア」でも紹介。明治維新の風を受けながら、颯爽と活躍する姿が表現されている。(写真提供:大阪取引所)
ステンドグラスの装飾があるのは、円形エントランスホールの外周に沿って、連なるように設置された窓。市場館から受け継がれたステンドグラスで、花瓶と植物をモチーフにした、アール・デコ様式のデザインが、取引所のエントランスホールにふさわしい、上質な光を放っています。
天井と壁の照明は、市場館に取り付けられていた照明のデザインを再現。
外壁のくぼんだ部分に窓が設置されていることから、ステンドグラスそのものの保存状態は良好であったとのこと。とはいえ、一部のガラスが割れていたり、窓枠の金属部分に劣化が見られたりしていたため、2004年の建て替え工事の際は、これらを丁寧に修繕しながら、オリジナルの姿によみがえらせたそうです。
花瓶と植物のモチーフは、ガラスに繊細な彫刻を施すことで表現されている。
エントランスホールにはステンドグラス以外にも、市場館から受け継いだ、歴史的な見どころがあります。
まずはエントランスホールの床と壁。合計8種類の大理石・花崗石が用いられており、床には分銅秤をかたどった、円と星形を組み合わせた文様が描かれています。
なぜ分銅秤なのかというと、大阪株式取引所が、金相場会所(金や銀の相場を決定する取引所)跡地に開設されたことが由来。金相場会所では、金や銀の重さを分銅秤で測っていたことから、その歴史を後世に伝えるべく、床のデザインとして取り入れたのだそうです。
濃い色のラインを含む内側が、市場館時代からの床。なお、エントランスホールでは、親子向けの経済教室や各種セミナー、コンサートなどを開催することがあり、写真左の普段は株価を表示しているアトリウムビジョンが、モニター代わりに使用されることもある。
白が基調のエレベーターホールは、琉球産の多孔質大理石が張られた洗練された空間。扉には、フィレンツェの聖ジョヴァンニ洗礼堂の扉を想起させる、四つ葉のクローバーと星の形の装飾が施されています。
扉本体はホワイトブロンズ製、装飾部分はアートブロンズ製とのこと。
もう一つの見どころが、壁に設置された通気口。こちらにもアール・デコ様式の繊細な模様が施されており、細部にまで美を宿らせた、当時の人たちのこだわりに胸を打たれます。
窓枠と同様、金属劣化が見られたため、意匠はそのままに、新しいものに作り替えたのだそう。
エントランスホールはちょっとした休憩スペースになっており、ビルの開館時間内であればいつでも見学が可能。鑑賞と一緒に、ビル内の飲食店で飲食を楽しむのもおすすめです。
さらに、ビルの5階には、市場館で使用されていた貴重な史料の展示や、投資について学ぶことができる「OSEギャラリー」があります。自由に見学できるほか、事前予約をすれば、案内付き見学ツアーを体験することもできるので、見学時間を含め、詳しくは「日本取引所グループ 大阪取引所見学」で検索してください。
加えて、毎年秋には「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(イケフェス大阪)」でもガイドツアーを開催。ツアーにはテラス見学も含まれており、「北浜1交差点を見下ろす、テラスならではの風景が楽しめる」と、毎年好評を博しています。
★マニアさんのおすすめポイント★
円形の空間に沿ってステンドグラスが連なる、エントランスホールにふさわしい上質な風景。パッと見すっきりとした幾何学模様に見えて、近づくと花瓶と植物をモチーフにした意匠が浮かんでいるのも、推したいポイントです。
[stained-glass_01]店舗情報

書に親しむ時間を静かに照らす、ドーム天井からの気品ある光

優雅な曲線を描く大階段とともに。記念室の窓も必見

大阪府立中之島図書館が開館したのは1904(明治37)年。当時の大阪は人口が多く、学問も盛んでしたが、同図書館の開館以前は、大阪に図書館らしい図書館は存在していなかったのだそうです。これを憂いた住友家第15代当主である住友吉左衛門が、建物一式と図書購入基金を大阪府に寄付。これにより、大阪府内初の本格的な公共図書館が誕生しました。
その外観は、訪れる人を神話の世界にいざなうような重厚な佇まい。ギリシャ・ローマの神殿建築様式を忠実に踏襲しており、日本における、新古典主義の代表的な建築物としても広く知られています。
歴史と文化が息づく、中之島を代表する建築物の一つ。(写真提供:大阪府立中之島図書館)
同図書館の開館当初は、4本の円柱が悠然と立ち並ぶ、「本館」のみの建物でした。それが予想以上の入館者が訪れ、すぐに手狭になってしまったことから、1922(大正11)年に、左右に広がる両翼部分が増築されました。
さらに2025(令和7)年には、新館(新書庫棟)との供用を開始。同図書館の既存書庫を新館に集約するとともに、本館と渡り廊下でつなぐことで、バリアフリー化を実現しました。
本館と左右両翼は、1974(昭和49)年に国の重要文化財に指定。本館の正面玄関の頭上には開館当初の名称である「大阪図書館」の名が記されている。(写真提供:大阪府立中之島図書館)
ステンドグラスが設置されているのは、同図書館の象徴ともいえる、本館の中央ホール。優雅な曲線を描く大階段がある、ドーム型の吹き抜けの空間で、静かに書と親しむにふさわしい、気品に満ちた趣をたたえています。
中央ホールはバロック様式を採用。外観とは打って変わった、感情豊かな表現が特徴とのこと。(写真提供:大阪府立中之島図書館)
ステンドグラスの装飾があるのは、ドーム型の天井部分。明かり取りとして設けられた円形窓(オキュラス)に、その美しい姿を見ることができ、ドームの形状とリンクするような均整のとれたデザインは、図書館の知的な雰囲気にもマッチしています。
ステンドグラスのまわりを囲む、円を放射状に24分割したドーム型天井部分には、古代の壺「アンフォラ」や、シュロの葉をモチーフにした幻想的な文様が繰り返し描かれている。(写真提供:大阪府立中之島図書館)
ステンドグラスに近づくかのごとく、ホールの階段を上っていくと、正面の壁に「建館寄付記」と「増築寄付記」の大小2枚の銅版が。そこには、同図書館の寄付者・第15代住友吉左衛門の、寄付に至った経緯がつづられており、大阪の文化と学問の発展を願う、深い思いが伝わります。
円形の壁面に沿うように、鋳造されている点にも注目。その左右には、長崎市の「平和祈念像」で知られる北村西望作の「野神像」と「文神像」が展示されている。(写真提供:大阪府立中之島図書館)
ステンドグラスではありませんが、同図書館にはもう1カ所、窓から差し込むおだやかな光が印象的な空間があります。それが本館3階にある記念室。開館当時の手作りガラスを使用した半円形の扇窓(ファンライト。写真左)があり、外の景色が少しだけゆがんで映るところも、歴史の証といえるでしょう。
かつて特別閲覧室として使用されていた部屋で、時に海外からの賓客をもてなしたことも。明治・大正期の調度品の展示もあり、当時の面影が感じとれる。 (写真提供:大阪府立中之島図書館)
同図書館では年に数回「書庫見学ツアー」を開催しており、新館を中心に、普段入ることができない書庫を、図書館司書が案内してくれるとのこと。同図書館所蔵の貴重な書物や資料にお目にかかることができるので、ステンドグラスともども、興味のある方はホームページをチェックしてください。
★マニアさんのおすすめポイント★
中央ホールに足を踏み入れ、見上げた瞬間、その高いドーム天井に思わず「わぁ…」とため息がこぼれます。ステンドグラスの光や、らせん階段が描くやわらかな曲線まで含めて、空間全体が一つのアート作品のようです。
[stained-glass_02]店舗情報

国内外の賓客を迎えるにふさわしい、格調高いデザイン

鳳凰と大阪市章の組み合わせ。集会室のステンドグラスも

国指定重要文化財の大阪市中央公会堂は、中之島の景観を象徴する建築物としても親しまれている存在。1918(大正7)年の開館で、以降講演会やコンサート、演劇などの舞台として、大阪の文化・社会活動を支え続けてきました。
長い年月の中で、建物の老朽化や、耐震性・設備面での課題が生じたことから、1999(平成11)年から2002年(平成14)年にかけて大規模な保存・再生工事を実施。歴史的・文化的価値の高い意匠をできる限り保存しながら、最新の設備を備えた施設にリニューアルしました。
大・中・小の集会室や各種会議室などを備える。国の重要文化財でありながら、教室やマルシェ、結婚式など、一般の方にも幅広く利用されている。(写真提供:大阪市中央公会堂)
建物は、赤れんがを基調としたネオ・ルネサンス様式。中でも、大きな半円形の窓がある東側正面は撮影スポットとして人気があり、毎年冬季に開催されるプロジェクションマッピングでも訪れる人を魅了しています。
建物の中央上部のアーチの下に、大きな半円形の窓がある。アーチの上には、商業の神「メルクリウス」と、科学・工芸・平和を象徴する女神「ミネルヴァ」の、2体の神像が立っている。(写真提供:大阪市中央公会堂)
ステンドグラスは館内に合計23カ所設置されており、いずれも、開館当初からの美しい姿を留めているとのこと。
その一つが、堤さんがおすすめする特別室のステンドグラス。特別室は、先にご説明した、大きな半円形の窓がある部屋で、開館当初は、国内外からの賓客を迎えるための貴賓室として使用されていたそうです。
館内でも特に芸術性の高い空間で、現在は挙式や写真撮影、小規模なコンサートなどにも利用される。天井や壁面には、洋画家の松岡壽による日本神話を題材とした絵画が描かれている。(写真提供:大阪市中央公会堂)
特別室のステンドグラスは、半円形の窓全体を構成する大規模なもの。左・中央・右の3つのブロックに分かれており、中央の上部には、翼を広げる2羽の鳳凰と、大阪市章の「みおつくし」が描かれています。
まさに西洋式のステンドグラスと日本の伝統のコラボレーション。そこに大阪の象徴が加わった、国内外の賓客を迎えるにふさわしい、格調高いデザインが完成されています。
平成の保存・再生工事の際は、開館当時のガラスを可能な限り残し、必要最小限の部分を、オリジナルに近いガラスで補いながら、元の姿によみがえらせたのだそう。
大阪市中央公会堂には特別室のほかにも、中集会室と小集会室でステンドグラスを目にすることができます。
特別室のステンドグラスが大窓を彩る「垂直のステンドグラス」であるのに対し、中・小集会室のステンドグラスは、上部の屋根窓から光を取り込む「天井装飾」として設計。どちらの部屋も、現在は講演会などに利用されるほか、披露宴会場としても人気があり、特別な日にふさわしい、優美な光を届けてくれます。
開館当初は大食堂や社交の場として使用されていた中集会室。ステンドグラスは大天井窓に3カ所、小天井窓に6カ所、回廊天井に10カ所に設置されている。(写真提供:大阪市中央公会堂)
室内のステンドグラス(左)は花鉢と樹木、回廊のステンドグラス(右)は海と帆船、みおつくしが、主な図柄となっている。
開館当初は中食堂として使用されていた小集会室。ステンドグラスは、天井と壁の間のカーブを描いている部分に、3カ所設置されている。(写真提供:大阪市中央公会堂)
カラフルな果物がふんだんに盛り込まれた、愛らしいデザイン。
ステンドグラスを含め、館内は施設利用者しか見学することができませんが、一般の方への館内見学の機会として、月に一度ガイドツアーを開催。詳しくはホームページの「お知らせ」欄で告知しているので、見学希望の方はこちらをチェックしてください 。また、毎年秋の「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(イケフェス大阪)」でも、館内見学が可能です。
ところで、館内には無料で利用できるスペースもあり、それが地下1階にある展示室。開館当時の貴重な資料を目にすることができるほか、平成の保存・再生工事の内容も詳しく説明しています。
地下1階の通路部分は、一般の方も自由に行き来できるので、館内の雰囲気に触れたい人は、まずはこちらに足を運んでみるのもおすすめです。
地下1階の展示室。周辺の歴史的建造物を紹介するコーナーもある。(写真提供:大阪市中央公会堂)
★マニアさんのおすすめポイント★
特別室のステンドグラスは、大きな窓いっぱいに広がる迫力が魅力。模様の一部に、丸いレンズガラスを取り入れているところが特徴的で、覗き込むと、ガラス越しに見える外の景色が逆さまに!ちょっと不思議でおもしろい見え方を、ぜひ現地で体験してほしいです。
[stained-glass_03]店舗情報

デパートらしい豪華さ漂う、きつねとツルの物語

ヴォーリズ建築の魅力を継承。ステンドグラス以外の見どころも!

心斎橋エリアのランドマークともいえる大丸心斎橋店。1726(享保11)年に、呉服店「松屋」を心斎橋に開店したのが始まりで、現在の本館の建物は1933(昭和8)年に完成したものです。
設計を担当したのは、アメリカ人建築家のウィリアム・メレル・ヴォーリズ。心斎橋筋側は「ネオ・ルネサンス様式」、御堂筋側は「ネオ・ゴシック様式」、館内に点在する華やかな装飾は「アール・デコ様式」と、多彩な様式を採用しており、さらに、館内の天井などにはイスラム様式やアラベスク調の模様などが施されています。
それから86年の時を経て、2019(令和元)年に本館を改装リニューアル。ヴォーリズ建築の継承をコンセプトに掲げ、単に元の姿に戻す“復元”ではなく、文化財としての価値を大切にしながら、本来の姿によみがえらせる“復原”に注力しつつ、改装を行ったのだそうです。
ヴォーリズが設計した本館が、2019年の改装リニューアルを経て、地上10階建ての新しい本館に。(写真提供:大丸心斎橋店)
ネオ・ゴシック様式の御堂筋側の外壁。垂直が強調されているところと、豊富な彫刻を施しているところが特徴なのだそう。(写真提供:大丸心斎橋店)
ステンドグラスは御堂筋中央玄関にあり、もちろんこちらもヴォーリズ建築の一部。互いを理解し、思いやる大切さを説いた「きつねとツル」の物語が描かれています。
きつねとツルのほかに「フラミンゴもいる」という説もある。(写真提供:大丸心斎橋店)
2019年の改装リニューアル時には、オリジナルに近いガラスを厳選して、破損部分の入れ替えを行なった とのこと。また、照明をLED化したものの、光り方は旧本館時代の趣を再現。ヴォーリズの世界観を大切に受け継ぎながら、現代の基準にかなう性能へとアップデートしました。
入り口の扉の幅に合わせて、横長にデザインされたステンドグラス。きつねとツルの姿は、向かって左端にある。(写真提供:大丸心斎橋店)
そのほかにも、ヴォーリズ建築の見どころが随所に息づいており、たとえば、心斎橋筋中央玄関にある「孔雀レリーフ」もその一つ。じつは同店は、1933年の本館完成前に、店舗が焼失するという災難に見舞われたことがあり、当初は再建の願いを込めた「不死鳥」のレリーフを製造会社に発注していました。ところが、“貴重で珍重される”という理由から、逆に「孔雀」が提案されたというエピソードが残っています。
細やかな彫刻を施した壮麗なレリーフ。入店する前にじっくりと眺めてみてほしい。 (写真提供:大丸心斎橋店)
1階のエレベーターホールは、大理石が静かに輝く、教会を思わせる佇まい。時代は変われど、お客さまの心をときめかせる上質な時間が流れています。
さまざまな様式が混在しつつも、これらが見事に調和している同店。これがヴォーリズ建築の魅力、ひいては同店の魅力であると言えそうです。
2019年の改装リニューアル時は、使用できる部材は可能な限り使用。多少の色ムラがある部分も、歴史の蓄積として残しているのだそう。(写真提供:大丸心斎橋店)
★マニアさんのおすすめポイント★
入り口の頭上でひときわ目を引く、デパートらしい豪華なステンドグラス。ちなみに、ヴォーリズは「ウサギとカメ」の物語もレリーフに託しており、こちらは御堂筋中央玄関の風除室(建物の入り口前に設けられた小部屋)で目にすることができます。
[stained-glass_04]店舗情報

祈りの時間に寄り添う清らかな光。聖書の植物もモチーフに

居留地の面影を残す歴史ある教会。予約制の聖堂見学も実施

ご紹介する川口基督教会のある大阪市西区川口は、大阪の開港とともに居留地(外国人の居住・営業が認められた区域)が開設されたことで知られる場所。この地に移住した、日本プロテスタントの初宣教師であるC.M.ウイリアムズ主教は、自宅で英語による礼拝を始め、これが現在の川口基督教会へとつながっていきました。
現在の聖堂が完成したのは1920(大正9)年。イギリスゴシック様式の聖堂で、アメリカ人建築家のウイリアム・ウイルソンが設計を手がけました。
赤いレンガ造りの教会。川口地区で、居留地時代の面影を残す唯一の建物となっている。
1945(昭和20)年の大阪空襲でも、屋根の一部が焼失するという被害に見舞われましたが、同教会の最大の危機となったのが、1995(平成7)年の阪神・淡路大震災。教会の高い塔が倒れ、一時は取り壊すことも検討されたそうですが、全国の教会や大阪市民をはじめ、海外の人たちからも支援を受け、もとの姿によみがえりました。
聖堂2階からの眺め。目の前に広がる荘厳な景色に圧倒される。
1991(平成3)年に設置されたパイプオルガンは、幸いにも震災の被害を免れた。
同教会では、デザインの異なるステンドグラスをさまざまに目にすることができます。
最初に設置されたのは、1979(昭和54)年に奉献された、聖堂の正面にあるステンドグラス。縦長にデザインされたステンドグラスが3列並んでおり、「十字架とイギリス薔薇」がテーマになっています。
祈りを捧げる静寂の時間が、ステンドグラスの清らかな光に包まれる。
続いては聖堂の左面にある3種の絵柄からなるステンドグラスで、こちらは創立120周年を記念して、1992(平成4)年に奉献されたもの。テーマは「聖書の花と植物」で、テーマの通り、聖書に登場する花と植物が美しく描かれています。
こちらのステンドグラスは、デザイナーで七宝作家・日本画家の鈴木周子がデザインしたものですが、これを見た海外の人たちから、「めずらしい」と言われることがあるのだとか。その理由は「ステンドグラスに真っ白な余白部分があるから」。海外のステンドグラスは余白部分も、色付きガラスを使用することが多いのだそうです。
聖堂正面のステンドグラスともども、震災の被害を免れた、3種の絵柄のステンドグラス。ぶどうやざくろ、きゅうりなどの植物が、生き生きと描かれている。
さらに、聖堂2階の背面にも、迫力のある大きなステンドグラスが。こちらは2010(平成22)年に、創立140周年を記念して奉献されたステンドグラスで、「ゲッセマネの祈り~み手の中で」がテーマになっています。なおゲッセマネとは、エルサレムの東に位置するオリーブ山のふもとにある、イエスが受難の前夜に最後の祈りを捧げた場所なのだそうです。
神様に見守られているような空間で、祈りを捧げることができる。さらに小礼拝堂にも「信・望・愛」をテーマとしたステンドグラスがある。
同教会では「震災のときに助けてくれたお礼に」と、予約制の聖堂見学を実施。教会内をゆっくり見学できる貴重な機会となっており、ご予約は電話でのみ受け付けています。
また、毎年秋の「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(イケフェス大阪)」での見学も可能。これに合わせて同教会では、飲食やゲームなどが楽しめる「川口フェスタ」を開催しています。
★マニアさんのおすすめポイント★
大阪でキリスト教信仰を広める中心となった教会。ご紹介したステンドグラス以外にも、余ったガラスで制作したという、小さなステンドグラスをところどころで目にすることができます。
[stained-glass_05]店舗情報
【編集後記】
光が差し込むステンドグラスは、まさに宝石のような美しさ。長い年月を経て、大切に守られてきた輝きを、ぜひみなさんにも体感していただきたいです。また、堤さんのリストには、公開の機会が限られている貴重なステンドグラスも含まれています。これらは、歴史的価値のある建物内でお目にかかれるものばかりなので、ステンドグラスをきっかけに、新たな発見や感動にもめぐり逢うことでしょう。
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