進化が止まらない、ニッポンの朝食 オオサカ食パンマニア 進化が止まらない、ニッポンの朝食 オオサカ食パンマニア

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公開日2023.02.10

紹介してくれるマニアさん

片山 智香子さん

1万個以上のパンを食べ歩いた旅するパンマニア。テレビやラジオなどのメディアで活躍する傍ら、デパートで催されるパン関係のイベントなども監修。全国各地のパン屋を紹介する「パン屋さんめぐりの会」を主宰している。また、「愛しのパン」(洋泉社)などの著書も執筆。各地のおすすめパンは、2020年から配信をスタートしたYouTube「片山智香子のパン旅ちゃんねる」でも紹介。効率的に回るルート案内と、パンの断面まで見せる丁寧な解説が好評。

ナニワの知られざる食パンの世界。

毎日の朝食に当たり前のように登場する食パン。ここ数年の高級食パンブームでお気に入りの商品に出会えた人も多いのでは? ご存知かもしれませんが、関東では6枚切りが、関西では4~5枚切りが好まれるそうです。厚めの食パンは食べ応えがあり、特に粉モノ好きの大阪の人と相性がいいのかもしれません。食パンは一見、似たような色や形ですが、使う粉の種類、製法、添加物の有無などその店ならではのこだわりが凝縮しています。大阪のパン屋はマニアの私もうなる名店揃い。梅田やミナミ以外に、ちょっとローカルな駅周辺にも隠れた名店が存在します。心に残る美味しい食パンの競演を楽しんでください!

目次

住宅街で愛されてきた体に優しい食パンがミナミの街にも登場

トースト専用に開発した珍しい食パンも

古くから高級住宅街として名をはせる、帝塚山で創業した食パン専門店、PANSHIROU TEZUKAYAMA。2021年の終わりにミナミに道頓堀店がオープンしました。より多くの人に知ってもらうため、中心地に立ち上げた旗艦店らしく、目立つ外観がシンボリックです。
食パンに使う粉は、北海道産の希少小麦粉をブレンド。風味豊かで、吸水率が高く、理想的な味と食感に仕上がります。安心な遺伝子組み換えでない小麦粉を使用していて、他の材料も安全・安心な体にやさしいものを厳選しています。北海道で採れる植物、てんさいを煮詰めてつくるてんさい糖は、体を温める作用に優れ、古くから伝わる米飴は必須アミノ酸やミネラルが豊富です。他にもコレステロールを調整する作用を持つ米油や、ミネラルをバランス良く含む沖縄の海水塩など、一つ一つプロの巧みな目利きで選んでいます。
食パンは「本食ぱん」という商品名で、「角」(1本=2斤980円)と「山」(1本=2斤980円)の2種類を定番として長く販売してきましたが、2022年にトースト用に開発された「焼」(1.5斤780円)が新たに加わり、3種類のラインナップに。
「角」は鉄の型に材料を入れて蓋をして焼く角型の食パン。蓋をすることで生地が上に伸びず、ギュッと詰まったもっちり感が強調されます。また、「山」はいわゆる山型の食パンで、蓋をしないで焼くことから、生地が上に伸び、ほどよく水分が抜けて、軽い口当たりに。もっちり、ふんわり、やさしい食感です。
そして、トースト専用の「焼」は小麦本来の味をストレートに楽しめるように甘さを完全になくし、油脂類も一切カット。焼くとバケットのようなサクサクした食感になり、それなのに、中の生地は切れない程のねっとりとした弾力感があります。保水量高めと低め、相反する二つの特徴を同時に備えた珍しい食パンです。
なんば道頓堀店となんばマルイ店では、「角」と「焼」を1斤ずつセットにした限定商品「本食ぱん 角/焼セット」(1,100円)を販売中。
「帝塚山の本店は主婦の方など常連のお客様が多いのですが、道頓堀店は若い方や外国人観光客の方も多いので、2種類の食パンを手軽に味わっていただけるセット商品を用意しました」となんば道頓堀店責任者の村上さん。
日本の食卓に深く馴染んでいる食パンという食べ物。当然、家庭用のナイフでスムーズに切ることができますが、専用アイテムを使うとより気分が上がるかもしれません。PANSHIROUオリジナル パンナイフは切れ味に優れ、パンを切るとキレイな断面になります。毎日使うアイテムとして秀逸。食パンを極めたくなったら、ぜひ手に取ってみてください。

★マニアさんのおすすめポイント★
「本食ぱん」の「角」と「山」を生で食べていましたが、トースト専用の「焼」が発売されたと知り、さっそく購入しました。焼いてみたところ、まるでお餅のようなもっちり具合。印象に残る食パンでした。
[shokupan_01]店舗情報

耳までやわらかく幅広い年齢層に好まれる食べやすい食パン

とがった耳が愛らしい猫型食パンも用意

千林商店街に近い下町の一角に位置するミネットパンは隠れ家的な小さなお店。オーナーの山口さんは東京や大阪に店を構える名店、ブーランジェリー・ブルディガラで勤めた後、主婦になり、一旦、家庭に入った方。その後、他店での販売スタッフ経験を経て、2020年に店をオープンしたそうです。
店内ではなくカウンター越しに買い物をする気軽なスタイルで、ショーケースに並ぶパンは約45種類。幅広い世代が行き交う町のニーズに合わせて、食パン、惣菜パン、菓子パン、焼き菓子とさまざまな商品を用意しています。工夫したのは各商品のサイズをやや小さめにしたこと。
「いろんな種類を味わってもらえるし、体が小さなお子さんや、食が細いお年寄りの方にも食べていただきやすいと思いました」と山口さん。クロワッサンが20円台から買えるなど、お財布にやさしい値段設定です。また、猫モチーフの商品を何種類も展開していて、愛猫家のお客様たちもよく来店されるとか。
食パンは3種類の小麦粉をブレンドし、ミネラルやカルシウムを豊富に含んだきび砂糖を使用。粉に熱湯を加えてつくる湯種製法を取り入れていて、しっとり、もっちりした食感が特徴です。ほのかに甘さが感じられ、耳までやわらかい、そして、リッチなバターの風味が漂う食パンに仕上がっています。値段は「食パン」が378円、同じ生地を使う「猫型食パン」(388円)もあり、目鼻が描かれた袋に入った姿は可愛さいっぱいです。購入当日はそのまま食べて豊かな食感を、翌日はトーストして香ばしい香りを楽しんでください。
食パン以外にも人気商品がいろいろあり、おすすめは「黒豆クリチー」。シンプルなバターロールの中に、黒豆とクリームチーズでつくるフィリングを入れた和洋折衷を感じさせる商品。フィリングはあっさりしつつコクがあり食べ応え十分。トースターなどで温めるとチーズがやわらかくなり、まろやかさがアップします。
また、パン以外に焼き菓子にも力を入れていて、こちらにも猫モチーフが健在。シンプルな猫型クッキーや香ばしいアーモンドをキャラメルがけにしたフロランタンならぬ「フロニャンタン(!)」など手土産にもピッタリです。
強い思いでパンづくりを再開させた山口さんは、工程にもこだわりがあり、製造から販売まですべてをお一人でこなされているとか。
「作り手である私自身が店頭でお客様と直接、会話するので、いただいた感想や要望をすぐにパンづくりに反映することができます」。
そのままでも十分美味しいパンが、工夫や改良を重ねてさらにグレードアップ。買い手側も、何度もリピートしたくなります!

★マニアさんのおすすめポイント★
食パンはしっかりした食感ながら、同時に歯切れの良さもあり、食べやすいですね。耳がやわらかいので全体がまとまった一体感があります。何もつけなくても美味しく、逆に余計な味を足して邪魔したくないほどです。
[shokupan_02]店舗情報

フランスで修業したオーナーが作る食パンは食感や風味が抜群

香りと弾力がやみつきになる「パン ド ミ」

肥後橋駅から少し離れた裏通りで、ピンク色の可愛い外観が目立つルルット。小さな店ながら美味しいパンを求める人が絶えない、一度は足を運んでみたい場所です。
オーナーの中岡さんは、日本の名店で修業した後、さらに腕を磨くため単身で渡仏。パリの有名店「ル・グルニエ・ア・パン」と「デュ・パン・エ・デジデ」に勤めて、元々、好きだったハード系を中心に幅広いパンの製法をマスターしたそうです。
店に並ぶ食パンは4種類。「パン ド ミ」(1斤250円、1本500円)は、北海道産小麦粉「春よ恋」、種子島産のきび砂糖、赤穂の粗塩を使用し、湯種製法で製造。他のパンもそうですが、中岡さんが渡仏時代に慣れ親しんだフランス製の遠赤外線式オーブンで焼成。小麦粉が持つ豊かな香り、砂糖がかもしだす深い甘味、粗塩のコク、すべてが調和して奥行きのある味わいになっています。
「フランスの食パンはアコーディオン状にごく薄くスライスしますが、日本では厚めが好まれるので、食感も厚めに合うように工夫しました」と中岡さん。生のまま食べるとかなりもっちりした弾力感を味わえて、トーストとすると香りと旨味が際立ちます。
また、「天然酵母食パン」(1斤300円、1本600円)は、北海道産小麦粉「はるきらり」を使用。リンゴとジャガイモを一からすりおろす手間隙かけてつくる天然酵母がこだわり。袋を開けた瞬間に酵母がかもしだすさわやかな香りが広がり、朝の目覚めなどにおすすめの商品です。
食パン以外にも商品が豊富でトータル約70種類を用意。店名と同じ名前の「パン ルルット」はグラハム粉でつくるハード系パンで、グラム単位でカット販売しています。やや重めで食べ応えがあり、オリーブオイルと相性抜群です。フランスの味だけでなく日本人になじみ深いパンも得意で、十勝小豆を使う風味抜群のあんぱんが人気。地域密着型でもあるこの店らしく、ご年配のお客様のリクエストに応えて商品を開発したそう。 
「フランスのブーランジェリーは基本的にショーケース越しに販売するスタイルで、お客様もあらかじめ買う商品を決めていますが、ここは日本なので、店内でいろんなパンを見て選ぶことを楽しんでほしいと思いました」と中岡さん。その思いは外観同様、愛らしい店内の風景にあらわれています。パンが並ぶ棚の背後に飾られたカラフルなカフェオレボウルやお菓子の型は、渡仏時代に郊外のプロカント(蚤の市)でコツコツ買い集めたものだとか。どれも素敵で買い物途中に見入ってしまいます。

★マニアさんのおすすめポイント★
「パン ド ミ」はしっとり美味しい食パンです。いつもパンを食べるとき、飲み物を飲んでいましたが、水分量が多いのか、「パン ド ミ」は、それだけで食べられます。美味しさがストレートに伝わってきます。
[shokupan_03]店舗情報

食べれば食べるほどハマる不思議な食感の食パンは手土産にも◎

独自の湯種製法で他にない食パンが完成

大阪きってのお洒落エリア、堀江界隈。ハイセンスなショップが並ぶ街に、溶け込むように店を構えるボーノベーカリ。ひねりのきいた美味しいパンづくりで評判です。
食パンは店の看板商品でもあり、「もっちり生食パン」(486円)と、チーズ入りの「ゴロゴロチーズ食パン」(756円)の2種類を展開。
「当店の食パンの大きな特徴は、パンづくりとスイーツづくりの2パターンの湯種を取り入れた独自のダブル湯種製法で生地をつくる点です。パンの湯種はコシの強いうどんのようなもっちりした食感に、また、ケーキの湯種はスポンジ生地のようなふわふわした食感に仕上がります。よって、相反する二つの食感が両立した他所にあまりない食パンが完成しました」とブランドマネージャーの新井さん。
北海道産の小麦粉や牛乳を使い、約1年かけて開発したという自信作の食パンは、お餅を思わせるもっちり感、それでいて、ふんわりした口当たりの良さが魅力です。加える水の量も、一般的な食パンが生地に対して60~70%というところ、80%以上と多めに配合。さらに、水分を閉じ込めるスチーム製法を使用するので、しっとり上品ななめらかさも加わります。生地の美味しさをストレートに味わえるのがもっちり生食パンで、ゴロゴロチーズ食パンは、同じ生地を使い、チェダーチーズとエダムチーズの2種類で豊かなチーズ風味に仕上げています。もっちり生食パンは手軽に食べられるサンドイッチ商品でも販売。ゴロゴロチーズ食パンは、手土産にピッタリのキュートなイラスト入りのギフトパッケージが用意されています(無料)。また、他にチョコ味やサツマイモ入りなど季節限定の食パンが登場します。
食パン以外のパンも特色豊かで、甘い菓子パン、惣菜パンとも、形が棒状になっています。
「このあたりは、アパレル関係や美容室で働く人が多く住んでいて、忙しい人が多いエリアです。手早く、ワンハンドで食べられるパンをつくると喜んでもらえると考えました」と新井さん。その思いは街行く人たちに伝わり、1日に数百点を売り上げるヒット商品も生まれました。バターたっぷりの生地とアーモンド入りのチョコレートが好相性な「チョコクロワッサン」や、口当たりの良いソフトフランス生地に、バターと甘さ控えめのあんこを挟んだ「あんバター」をぜひ食べてみてほしいところ。
自然のままの木や鹿のツノをインテリアにあしらった店内は、棒(ボー)の世界に迷い込んだような光景をイメージしたそう。ユニークな店づくりにワクワクしながら買い物ができます。
★マニアさんのおすすめポイント★
とにもかくにも、ふんわりしていながら、もっちり! 北海道産の小麦粉とミルクを使用していて、加水率も高いので、このもっちり感も納得です。ほんのりしたミルキーな甘さもあり、まずはそのまま食べてみてほしいです!
[shokupan_04]店舗情報

トーストは気軽なメニュー。だからこそ食パンにこだわりを!

季節の限定フレーバーも押さえたい

鶴橋駅の近く、玉造筋沿いに店を構えるレブレッソ 本店は、コーヒースタンド風のベーカリーカフェ。店内でつくる焼きたての食パンを販売していて、イートインでも楽しめます。といっても、元々はコーヒーをメインに考えて、スタートした店だったとか。
「2014年の創業当時のメンバー達がコーヒー業界出身で、最初のコンセプトは美味しいコーヒーを出す店でした。それで、ドリンクメニューによく合うフード類を考えたとき、トースト、つまり食パンを思いついたのです。製粉会社に協力していただき、オリジナル食パンを開発。フードメニューで出す以外に、店頭でも販売することにしました。当時は今と違って食パン専門店自体が珍しく、話題になりました」と店長の森さん。
店に並ぶ食パンは常時4種類。定番に加えて、春なら桜あん入り、秋ならサツマイモ入りと季節限定のフレーバーも登場します。一番人気の定番「レブレッソブレッド」(700円)は湯種製法でつくる食パンで、温かいご飯のようなもっちりした食感とほのかな甘味が特徴。毎日は言うまでもなく、長年に渡り食べつづけても飽きない味を目指し、卵や保存料不使用の安全性にもこだわっています。おすすめは表面に少し焼き色がつく程度に軽くトーストする食べ方。サクッと軽い食感が加わり、口溶けがさらに良くなります。
トーストはイートインで食べるのもおすすめで、初めて訪れた人はメニューの多さに驚くかもしれません。シンプルなバタートーストや厚切りトースト、また、具材がのったオープンサンド類に加えて、食パンと同じく限定メニューを展開。いちご大福をイメージしたり、何種類ものフルーツを豪華に盛り付けたり、パンを愛するスタッフの思いが形になった独創的なトーストが2ヶ月サイクルで登場します。毎回、足を運ぶのが楽しくなるはず。飲み物は酸味や苦みのバランスがいいブレンドコーヒーをぜひどうぞ。
店にはもう一つ見逃せない商品があります。それが、オリジナルのミルクジャム。淡路島産の牛乳をメインの材料として使い、生クリームや練乳を加えて煮詰めてつくるジャムは、深くまろやかな美味しさ。ピスタチオやラム・レーズンなど少し大人の味が揃います。パン以外にクラッカーなどにつけても美味しくいただけます。
食パン、コーヒー、ジャム、どれも魅力的なこの店は、店内の雰囲気も素敵です。風合いを感じるレンガで囲まれた空間と、木やアイアンで統一したシックなカウンター席。アメリカの西海岸にあるコーヒースタンドをイメージしたそうです。気軽に立ち寄れるのに本格的、充実したひと時を過ごせます。

★マニアさんのおすすめポイント★
イートインメニューの厚切りトーストが大好き。厚さたっぷりなのに、全体がふんわりして、かなり口溶けがよく、あっという間に完食。レブレッソの食パンはバターやジャム以外にハチミツにもよく合うと思います。
[shokupan_05]店舗情報
【編集後記】
マニアさん推薦の店はどれもさすがと思わせる美味しさでした。小麦粉の旨味、湯種製法のもっちり感、天然酵母の香り、加える水の量、と各店で特徴を聞けば聞くほど一見、シンプルな食パンが細部まで計算してつくられているとわかりました。食パンの基本的な食べ方は、購入直後はそのまま生で、次はトーストして、でしょうか。しかし、ハムや野菜を乗せたり、フレンチトーストにしたり、食べ方は無限に広がります。お気に入りの食パンを手に入れるのはゴールではなくスタート、次の展開は自由自在!
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