日本の古き良きサードプレイス オオサカ純喫茶マニア 日本の古き良きサードプレイス オオサカ純喫茶マニア

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公開日2021.01.08

紹介してくれるマニアさん

東京喫茶店研究所二代目所長難波里奈さん

日中は会社員、仕事帰りや休日にひたすら純喫茶を訪ね、その魅力を広めるためマイペースに活動中。著書に『クリームソーダ 純喫茶めぐり』『純喫茶の空間』『純喫茶とあまいもの』『純喫茶とあまいもの 京都編』など。

人懐っこい雰囲気がある大阪の純喫茶

純喫茶の魅力は、なんといっても今から新たにつくることはできない凝った内装。もう文化遺産といっても良いほど貴重なものだと思います。次世代にも引き継いでいきたい空間が、繁華街だけでなく、いろんな町にあるのもいいですよね。大阪は、都会でも昭和の空気感が残っている場所が東京より多いのもうらやましいです。 特に大阪の純喫茶は、純喫茶を好きになりはじめたばかりの人でも入りやすい雰囲気。有名店でも人懐っこさを感じるお店が多い気がしています。こぢんまりしたお店でも常連さんのみならず、一見さんも温かく迎えて下さるところが多く、いつも感謝しています。 今回は数多くの純喫茶のなかでも、そのときの気分に合わせて好きに選べるよう、比較的席数が多いお店を中心に選びました。

  • ※当サイトにて記載の営業時間については、通常業務の時間となります。詳細は各店舗・スポットにてご確認ください。
目次

地域に根付いた街の癒しスポット

純喫茶という場所は、昔から近隣の人の生活に根付いていて、老若男女に愛されていますよね。朝はモーニング、昼はランチ、そして1日中コーヒーとあまいものがある。時間を問わず利用できる懐の深さが純喫茶の醍醐味だと思います。

歴史が刻まれたゴージャスな内装

どこもとても凝った内装で、それぞれが個性的。歴史が育まれているからこそ漂う雰囲気も含め、今から新しくつくることはできない華やかさがあります。そして食事メニューはボリュームがあってお手頃価格というギャップもいいですよね。

昭和の残り香が漂う【マヅラ喫茶店】

イメージは宇宙船!テーマパークみたいな異空間

四つ橋線西梅田駅南改札からすぐ。大阪駅前第1ビルのB1Fの奥にある。
創業は戦後間もない1947年、1階が15坪の喫茶店で2階は住居でした。その後駅前再開発事業に伴い、大阪駅前ビルが建設されることになったため一旦立ち退き、1970年ビル完成後に地下1階へお引越し。創業者の劉盛森さんは「路面店から地下にもぐるのは、不安があった」と言いますが、お客様ファーストの精神を貫きお店は大盛況。劉さんは御年100歳ですが、今も息子さん、お孫さんと一緒にお店に立っています。
植物やパーテーションにより、他人の目線が気にならずくつろげる。
界隈で働くビジネスマンの憩いの場所として、半世紀以上の長きにわたり、愛されている「マヅラ喫茶店」。天井は宇宙に見立てたブルー、ドーナツ型の凹凸は月のクレーターを表現し、店全体を宇宙船に見立てています。奇抜なものを作って話題性を狙ったわけではなく、高度経済成長期の日本を支えていたビジネスマンに対して「休憩時間くらいは頭上を見上げてリラックスしてほしい」という劉さんの思いやりから。メンテナンスを繰り返しながらも、創業当時から変わらぬ姿がそこにあります。
こっくり苦めだけど、口当たりはマイルドな「自家焙煎コーヒー」。
しっかり苦めの「自家焙煎コーヒー」(300円/税込)も、創業当時から変わらぬ味。劉さんの信念により250円をキープしていましたが、時代の流れを鑑みて昨年泣く泣く300円に値上げ。娘の由紀さんいわく「父は落ち込んで、一時期寝込んでしまった」とか。
昔ながらの「純喫茶のナポリタン」は安心できるケチャップ味。
変化があったのはフードメニューの数。昨年より「純喫茶のナポリタン」(500円/税込)、「マヅラのハンバーグサンド」(500円/税込)などの食事メニューや、「パフェ」(各種600円/税込)、「フルーツサンド」(600円/税込)、「プリンアラモード」(600円/税込)などのスイーツが仲間入りし、より幅広い時間帯で利用できるように。席数が約200席と多いのもうれしいところ。梅田という一等地にある巨大なくつろぎ空間は、変わらぬ安心感と充実したメニューで私たちを迎え入れてくれます。

★マニアさんのおすすめポイント★
純喫茶を好きな人には必ず薦めたい名店!令和になった今も、まだこんな空間が残っているのがありがたいですね。
[junkissa_01]店舗情報

昭和建築の美しさと拘りの内装【King of Kings】

職人技が光る、モザイクタイルの美しさにうっとり

スコッチウイスキーがメインのバーだが、昼間は喫茶店として営業。
「マヅラ喫茶店」から徒歩30秒の場所にある姉妹店「King of Kings」。こちらは大阪第1ビルの開業と同時に誕生しました。宇宙をイメージし、天井がブルーという点は「マヅラ喫茶店」と同じですが、こちらはカーペット敷きのラウンジのような空間。創業した頃、世間の喫茶店は木のぬくりもりを感じる造りが多かったため、こういったモダンでミッドセンチュリーな趣はめずらしかったようです。
ラウンジの片隅にあるグランドピアノ。夜19時~クラシックが演奏される。
カラフルな椅子が並ぶ様子は、なんだか近未来的。直線的なインテリアがないのは、店の設計を手がけた建築家・沼田修一さんの「やわらかさを感じる丸いものは心をなぐさめてくれるから」というアイデアから。当時28歳だった沼田氏が「僕の青春時代の作品」と話すほど、情熱を込めて手がけたそうです。椅子もソファも丸みを帯び、店の真ん中には、流れ星のような曲線を描く装飾ランプも。店のガラス扉も端をわざわざカーブさせています。
よく見ると1枚ずつニュアンスが異なるモザイクタイル。間近で観察してみて!
もっともこだわったのは壁一面に貼り付けたモザイクタイル。相当なコストがかかるものの、そのユニークなアイデアにオーナーの劉さんが乗り、職人たちが苦労しながら1枚ずつ手で貼りつけた渾身の作。この唯一無二の空間は、「マヅラ喫茶店」と同様、大阪市が選定した「生きた建築ミュージアム」の一つにも選ばれています。
バーカウンターからもガラス板越しにモザイクタイルが眺められる。
ラウンジの奥にはバーカウンターがあり、高級スコッチ「オールド・パー12年」(グラス500円、ボトルキープ10,000円)がずらり。現在、代理店制度はありませんが、以前はMacdonald Greenlessと契約して、オールド・パーの総代理店を務めていました。

18:30までは喫茶店として利用可能。「コーヒー」(350円)、「クリームソーダ」(500円)などが人気です(18:30以降はそれぞれ+200円)。日中にコーヒーを飲みに来て、年を重ねてからはボトルキープしたウイスキーを飲みに訪れる、そんな渋い目標を掲げてみるのもいいかもしれません。

★マニアさんのおすすめポイント★
外から見ても中から見ても美しいモザイクタイル。ピアノがある空間というのも素敵。
[junkissa_02]店舗情報

通天閣の真下、ストライプが目印【ドレミ】

レトロかわいい“あまいもの”が若者に人気

絵本の中に出てきそうなレトロポップな建物。
大阪の観光名所の一つ・通天閣を目指せば、必ず見つかる「ドレミ」。三角形の角地にあり、ツタに覆われた3階建ての建物にはストライプのテントが。入口には食品サンプルが並んだショーケースがたたずんでおり、初めましてだったとしても、いつかどこかで見たような懐かしさを感じさせます。
店の北側の壁際、自動販売機の上にかつての名残が。
店主の山本真也さんは二代目。先代はここで「ニューワールド」という名前の写真館を営んでいましたが、親せきが飲食店をしていたこともあり1階を喫茶店、2階を写真館に。現在写真館はありませんが、その歴史は店の壁に刻まれています。
定番人気の「プリン」と最近人気急上昇の「バナナフロート」。
人気の「プリン」(530円/税込)は店主の奥様の手作りです。玉子、牛乳、砂糖で作るシンプルな焼きプリンは素朴だからこそ、何度でも食べたくなる味。ほどよいやわらかさで、カラメルの甘さもあっさり。ねっとりしたホイップクリームとのバランスが絶妙です。

最近オーダーが増えているが「バナナフロート」(750円/税込)。バニラアイスクリーム、牛乳、砂糖で作ったバニラフローズンにバナナをトッピングした出で立ちは、パフェのような華やかさがあります。
真っ赤な椅子と大理石のテーブル、帽子のようなランプがなんともかわいい!
席に着く前にオーダーを伝える常連さんから、カメラを構えた若者まで客層が幅広く、1人客でもくつろぎやすい雰囲気。大きな窓からは新世界の街を行き交う人もよく見えて、ぼんやりノスタルジックな気分をかみしめたいロケーションです。

★マニアさんのおすすめポイント★
緑のストライプのひさしと、真っ赤な椅子がレトロで愛おしい。プリンもお気に入りです。
[junkissa_03]店舗情報

著名人も愛した、レトロ喫茶【アメリカン】

随所に散りばめられたおもてなしの心に感動

階段横の巨大なリレーフは彫刻家・村上泰造の作品。美しいシャンデリアも圧巻。
かつての道頓堀は演劇・演芸界の劇場が数多く立ち並び、いわば大阪のブロードウェイ。現在も国立文楽劇場、大阪松竹座、再開された角座などがあります。三代目店主の山野陸子さん・誠子さんは「この席は藤山寛美さんの指定席」「ショートケーキ200個を楽屋に差し入れしたりして」と、名優たちとの思い出を語ってくれます。
店内のいたるところに店主姉妹が心を込めて生けた季節の花が飾られている。
そんな「アメリカン」の創業は1946年。隣家の火事により半焼したため1963年に立て直し、少しずつ増築して現在の姿になりました。高度経済成長期真っただ中という時代背景もあり、内装はとっても豪奢。照明、テーブル、椅子がオーダー品なのはもちろん、店に飾る絵画も知人の画家に頼んだ描きおろしの作品。1階にある波打つ壁面は1㎝程度の板を約640枚も組み合わせて表面をツヤやかに仕上げ、ランダムにステンドグラスを埋め込んでいます。
ドリンク付きの「ホットケーキセット」(1,000円/税込)。
内装だけでなく、メニューもサービスも本物志向。食材は最高品質のものを使い、ソースやドレッシングは手作り。名物の「ホットケーキ」(600円/税込)は専用の銅板で丁寧に焼き上げ「少しでもおいしい状態で食べてほしいから」と6等分してから提供。バターもじゅわっと染み込んでいるため、シロップをかければアツアツを口の中に放り込めます。
プリンに季節のフルーツをたっぷり盛り付けた「プリンファッション」(1,300円/税込)。
最近人気が高まっているのがプリン。オーブンで1時間半かけてじっくり焼き上げ、その後2時間以上冷ましてやっと完成する、手間暇かけた一品はプリンの素朴な甘さとカラメルのほろ苦さが絶妙です。

安心して食べられるおいしいメニューと温かいおもてなし、さらにアート作品のような店内装飾も楽しめるなんて、お得感を求める大阪人も、純喫茶通も大満足できるはずです。

★マニアさんのおすすめポイント★
店内がとにかくゴージャス。純喫茶に夢中になった頃からの憧れの存在です。カットされたホットケーキは最上級のおもてなし!
[junkissa_04]店舗情報

レンガ造りのヨーロピアンな喫茶店【水車】

国も時代も飛び越えた、非日常感に浸る

街灯のような照明や真紅の布張りチェアが印象的。自分だけの特等席を見つけたい。
Osaka Metro西田辺駅の3号出口からすぐ、レンガ造りの一軒家喫茶店「水車」。約60年前の創業当時、店は1階だけ。2階は家族で住んでいたそう。その後、2階を客席にして、1階の奥も増築、今は100席近くあります。

昔は今ほど携帯電話が普及していないため、喫茶店は待ち合わせ場所としての役割がありました。こちらもかつては店内に電話ボックスがあったそうで、その名残として入口にはピンクの公衆電話が。当時の人々の生活が想像できます。
2階奥のテーブル席はドラマ撮影に使用されることもしばしば。
内装は中世ヨーロッパをイメージ。ドラマやCMのロケ地として使われることも多く、もしかしたら見覚えがあるかもしれません。「常連さんはお気に入りの席が埋まっていたら『また来るわ』と一旦帰りはるんです」と店主。確固たるお気に入りの席があるのもうなずける、素敵な内装です。
改良を重ねてコクが増した「イタリアンスパゲッティ」。
昔ながらの「イタリアンスパゲティー」(700円/税込)は密かに進化。昔はケチャップがメインの味付けでしたが、今はワインやブイヨンを加えてコク深くなりました。先代の頃はランチタイムだけで50食出て、鉄板では追い付かないと皿に変えたこともあったそうですが、「待ってもいいから鉄板がいい」という常連客からの熱望で元に戻したと言います。
コーヒーフロートの逆、アイスの上にコーヒーを注いだ「コーヒークープ」。
オリジナルの「ブレンドコーヒー」(450円/税込)はアーモンドの風味が漂うあっさり系。めずらしいのはバニラアイスの上にアイスコーヒーを注ぎ、フルーツを盛りつけた「コーヒーク―プ」(750円/税込)。カフェで見かけるアフォガードの純喫茶版です。

客席は入口から少し奥まった場所にあり、インテリアは重厚感たっぷり。外界とは遮断されている感覚が味わえ、非日常感もひとしお。なかなか遠出ができない今、プチトリップ気分に浸れます。

★マニアさんのおすすめポイント★
2階へ上がる階段が美しい。当時流行ったビクター製の球体スピーカーもモダンです。
[junkissa_05]店舗情報
【編集後記】
純喫茶は歴史があり、それぞれ個性が明確。家具の一つ一つに、積み重ねてきた味わいがありました。高度経済成長期に創業しているからか、勢いがある昭和の息遣いが感じられるのも新鮮。大阪市内なら移動もラクなので1日で3~4件ハシゴするのも楽しそうですよ!
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