音楽に酔いしれナイト オオサカジャズバーマニア 音楽に酔いしれナイト オオサカジャズバーマニア

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公開日2022.04.08

紹介してくれるマニアさん

ジャズクラリネット奏者吉川裕之さん

トラディショナルジャズを中心に、自身のバンド「South Side Jazz Band」で演奏活動をするほか、音楽プロデューサーとしても活躍。「とんぼりリバージャズボート」の運営も手がける。

“暗黒期”を経て花開いた戦後大阪のジャズ

ジャズとは、アメリカへ奴隷として連れてこられたアフリカの黒人たちが作り上げた音楽で、アメリカ南部のニューオリンズが発祥の地とされています。大阪にジャズが伝わってきたのは大正末期の1924年(大正13年)あたり。当時のジャズはダンスの伴奏音楽で、道頓堀界隈を中心にたくさんのダンスホールができ、若者たちから熱狂的な人気を集めていたそうです。しかし、1926年(大正15年)に大正天皇が崩御され、社会に自粛ムードが広がると、1927年(昭和2年)の府条例によって大阪府のダンスホールが閉鎖されることになり、翌年には大阪のダンスホールがゼロになってしまうという、まさに大阪ジャズ界の暗黒時代を迎えることになります。ジャズが大阪に帰ってくるのは戦後1945年(昭和20年)以降で、第二期ジャズブームが巻き起こる中、大衆音楽として再び愛されるようになりました。

さまざまに枝分かれし、進化し続けるジャズ

ひと口にジャズといっても、さまざまな種類があります。例えば、ジャズが発祥した頃に流行したニューオリンズジャズともいわれるトラディショナルジャズ、一般的にビッグバンドのスタイルで演奏されるスウィングジャズ、アドリブ演奏が聴衆を引きつけるモダンジャズ、現代的なコンテンポラリージャズなどがあります。ちなみに朝ドラで話題になったルイ・アームストロングは、ニューオリンズジャズを代表するトランぺッター。マイルス・デイビスをはじめ、後に続くプレイヤーたちに、今なお多大な影響を与え続けているんですよ。

「ハードルが高い」と思わず、まずは聞いてみよう!

初心者には、ハードルが高いと思われがちなジャズですが、「何から聞いてみればいいのか…」などと迷う必要はありません。とにかく聞いてみるのがいちばん。特に生演奏の場合は、プレイヤー個人の演奏力やバンドサウンドのグルーヴ感などをダイレクトに感じることができるので、「あの曲もよかったし、この曲もよかった」みたいになるんちゃうかな(笑)。
  • ※当サイトにて記載の営業時間については、通常業務の時間となります。詳細は各店舗・スポットにてご確認ください。
目次

ニューオリンズ市に認められた老舗

明るく楽しい雰囲気が魅力。名物のカツサンドも人気

1970年に、本場のジャズが聞けるライブパブとしてオープンしたお店。創業以来、オーナーを務めているのが森 美典さんで、娘の朋子さんはジャズシンガーとしても活躍しています。
朋子さんが思い出のレコードとして紹介してくれたのが、ルイ・アームストロングが出演した映画『5つの銅貨』のサウンドトラック。「私がジャズを歌うきっかけになったレコードの中の一枚です」
ニューサントリーファイブの歴史を語る上で欠かすことのできないのが、同店のハウスバンドである『ニューオリンズ・ラスカルズ』。
「実は創業当初はライブ演奏のない、レストランバーとして営業するつもりでした。この頃に知り合ったのがニューオリンズ・ラスカルズのメンバーで、練習する場所を探していた彼らに、演奏の機会を提供したのがそもそものはじまりです」と美典さん。
ニューオリンズ・ラスカルズはその名の通り、ニューオリンズジャズを演奏するバンド。ニューサントリーファイブでは、バンドのメンバーと出会って以来、およそ50年間、毎週欠かさずニューオリンズ・ラスカルズのステージを設けており、1984年には「ニューオリンズジャズを絶やさずに演奏し続けている」という理由から、ニューオリンズ市の名誉市民賞を受賞したそうです。
外輪船内のレストランをイメージした店内。ニューオリンズ・ラスカルズのライブは毎週土曜日に開催している。
テーマパークなどのBGMでもよく耳にするニューオリンズジャズは、心を弾ませるような、陽気で楽しいメロディが特徴。「ニューサントリーファイブをおすすめするポイントは、お店自体も楽しいところ」と吉川さんの言うように、店の扉を開くと、薄暗いジャズバーのイメージとはひと味違う、赤いカーペットが敷き詰められた明るい空間が広がります。また、窓に沿って設置されている、最大で25人が座れるという長~いカウンターも印象的。
「カウンター内のスタッフも、お客様との会話を楽しみにしています。ジャズについても気軽に質問してくださいね」と朋子さん。
ファンクやポップス、ジプシージャズなどのステージも。また休日に不定期で開催する「昼下がりライブ」も好評。
フードは、ライブ演奏を楽しみながら気軽にいただける軽食類が充実。注目は、創業当時からの人気メニュー「ビーフカツサンド」(2,100円/税別)。ミディアムレアに火を通した分厚いカツはやわらかく、衣とパンにしっとりとなじんだ甘辛味のソースがカツの美味しさを引き立てています。食べるときはお行儀は気にせず、がぶりと頬張るのが正解! 陽気なジャズを聞きながら、楽しい時間を満喫できます。
牛ヒレ肉を贅沢に使用。ビーフカツサンド用の肉で作る「ビーフピラフ」(1,900円/税別)も人気。
★マニアさんのおすすめポイント★
明るく、みんなで楽しめるお店。私も定期的にライブ演奏をしています。
[jazzbar_01]店舗情報

大阪ジャズ界を代表する歴史ある名店

重厚なインテリアが、くつろいだ時間を演出

1977年に創業した大阪のジャズバーの老舗。創業者の關 基久さんから、現在の支配人である小林一成さんにお店が引き継がれたのは2015年のことで、小林さんはもともとこのお店のスタッフとして働いていたそうです。
「若い頃はロックが好きだったのですが、このお店に勤めるようになってから、毎日お店のレコードを持ち帰っては聞いてみることを繰り返していました。そうしているうちに、ジャズにハマっていったという感じです」
小林さんのお気に入りの一枚は、ジャズ最高のデュエットといわれるエラ・フィッツジェラルド&ルイ・アームストロングの『ELLA AND LOUIS』。「大音量で聞くととても気持ちがいいんです」
吉川さんがこのお店をおすすめするポイントは「雰囲気がよく、高級感が漂う中でジャズを楽しめるところ」。店内のインテリアは、海外の老舗のジャズクラブを思わせる重厚な雰囲気で、レンガの壁や、音の跳ね返りをよくするために梁を渡した天井などは、創業当時のままの姿が丁寧に保たれています。
100人を収容できる広々とした空間。ソファ席とテーブル席とバーカウンターの3種があり(座席によって料金が異なる)、シチュエーションに合わせた使い方ができる。
ライブでは、ジャズを中心としたさまざまなジャンルの演奏を行っており、「イスに腰かけてゆったりと食事とジャズを楽しんでもらえたら」と小林さん。シェフが手がけるフードメニューは本格的な美味しさで、前菜やサラダ、軽食のほか、コース料理もオーダーすることができます。
ピアノカウンターのそばの壁には、創業者の關 基久さんの写真が。關さんが掲げた「贅沢過ぎてもリーズナブル」というテーマは、今も引き継がれている。
「配信などでは伝わらない生演奏の感動を、ぜひお店で体感してほしい」と小林さん。ちなみに店奥にあるバーカウンターは、出演アーティストが休憩時に訪れることもあるそうなので、運がよければ直接コミュニケーションがとれるという、貴重な体験ができるかもしれません。
ボトルキープのお酒がずらりと並ぶ、これぞジャズバーといった雰囲気。
★マニアさんのおすすめポイント★
雰囲気からジャズを楽しめるお店。高級感が漂います。
[jazzbar_02]店舗情報

シカゴの名店スピリットを継承

クオリティの高いステージがジャズファンを魅了

かつて一流アーティストへの登竜門として名を馳せていたという、アメリカ・シカゴのレストラン&ナイト・クラブ『ミスターケリーズ』。このお店の熱気とサービスを大阪でも再現したいと、1990年にオープンした同店は、本家ミスターケリーズから名称の使用許可を得た、正統な継承店です。
現在の店長は、かつてホールスタッフとして働いていたという西尾旨功さん。もともとジャズが好きで、大学時代はジャズサークルに所属し、トロンボーンを演奏していたそうです。
西尾さんの最近のお気に入りという、Quickly,Quicklyのアルバム『the long & short of it』。「かっこよくて、ずっと聞いていても飽きない一枚です」
吉川さんがこのお店をおすすめする理由は「ライブのクオリティが高いこと」。ライブスケジュールには国内外の一流アーティストが名を連ね、しかもライブの質を向上させるために、プロのエンジニアによる特別な音響システムを導入しているのだそうです。店いっぱいに心地よく響くサウンドは、ゲストはもちろんアーティストからも高い評価を得ており、「ライブならではの熱量が伝わって、元気をもらえると思います」と西尾さん。
席数60席の贅沢な空間。ジャズを中心にラテンやファンク、ポップスなど、幅広いステージを提供。
フードは同店のシェフによる、厳選素材を使用した料理を味わうことができ、シェフ自慢の「牛フィレディナーコース」(5,775円。要予約)は特別な日のディナーにおすすめ。単品メニューでは「ケリーズ特製牛フィレカツサンド」(1,800円)が人気があり、数日かけてじっくり煮込んだデミグラスソースが絶品です。
レジ前にディスプレイされたCDのジャケットもおしゃれ。
お店は『ホテルマイステイズプレミア堂島』の1Fにあり、宿泊客はもちろんジャズ初心者からも、気軽に訪れることができると好評。なお同フロアには、BGMにジャズが流れる『ミスターケリーズ・サイドバー』もあり、ライブの前後に、こちらのお店でお酒を楽しむのもおすすめです。
ホテルの正面玄関を入ってすぐ右手が『ミスターケリーズ』。さらに奥に進んだところに『ミスターケリーズ・サイドバー』がある。
★マニアさんのおすすめポイント★
ライブのクオリティが高いお店。ジャズとお酒が楽しめる、スタイリッシュなサイドバーもあります。
[jazzbar_03]店舗情報

ジャズとシャンソンの心に響く歌声

ボーカル中心のステージ。日本歌謡界のビッグネーム出演の歴史も

小さい頃から歌が好きだったという、ママの播本敬子さん。1985年にジャズのお店として『アートクラブ』をオープンしたそうですが、シャンソンと出会い、現在のジャズ&シャンソンというスタイルが定着したのだそうです。ところで、ジャズはアメリカ、シャンソンはフランスと、生まれが異なる音楽。「どこか通じるものがあるのですか?」とたずねたところ、「どちらも単純に好きなんです。どちらも同じ音楽ですから」と笑顔。
播本さんの思い出の一枚は故・桑名正博さんの『Boot Leg』。「ライブ音源を収録しており、アートクラブでの盛り上がったステージを思い出させてくれます」
吉川さんが「ボーカルをじっくり聞かせてくれるお店」というように、アートクラブはジャズもシャンソンも、ボーカルをメインとしたステージが中心となっており、「心に響く歌声を、ぜひライブで聞いてほしいです」と播本さん。毎週土曜日は、プロの演奏をバックに、ゲストがボーカルとして参加できるライブも開催しており、ステージと客席が一体となった、楽しい時間を過ごすことができます。
ハートで歌うボーカルに、心奪われるひととき。「ライトに合わせて色が変化する“ART CLUB”のロゴもかわいいでしょ」
女性らしい、華やかな雰囲気の店内では、播本さんの思い出に残るライブのチラシも目にすることができ、桑名正博さんや菅原洋一さん、内田裕也さんなどといった、日本歌謡界のビッグネームもずらり。これらの一枚一枚をながめるだけでも、アートクラブが歩んできた歴史に触れることができそうです。
写真右上のイラストは、建築家の永田祐三氏が、播本さんや出演アーティストを来店時に描いたもの。
料理はすべて手作りで、「アート風ピッツァ」(950円)や「チョット辛いトマトスープパスタ」(950円)などが人気。サラダとデザートもいただける、お得なセット(各1,200円)もあります。
ミナミの御堂筋沿いのビルの7F。音楽と過ごす楽しい夜を。
★マニアさんのおすすめポイント★
ジャズとシャンソンのお店。ボーカルをじっくりと聞かせてくれます。
[jazzbar_04]店舗情報

地下鉄の駅構内にある、モダンジャズ一筋の店

ジャズを気軽に楽しむための新しいとり組みも

かつてカリスマ的ベーシストとして活躍した、故・西山満さんが1970年に開いたお店。現在、店主を務めているのは、西山さんの愛弟子の一人である、テナーサックス奏者の長谷川朗さんです。
「関西大学のジャズ研究会に所属していたころ、来日中のシダーウォルトンカルテットのライブを観に、このお店を訪れたのが始まりです。それからアルバイトとして働くようになって、西山さんからさまざまなことを学ばせてもらい、2012年にこのお店を引き継ぐことになりました」
長谷川さんの思い出の一枚は、中学生の時にジャケ買いしたJay Jay Johnsonの『The Eminent Jay Jay Johnson,Volume1』。「当時はサスペンスドラマの音楽みたいでこわいと思ったのですが(笑)、ごく最近好きになりました」
このお店があるのはなんと、Osaka Metro谷町九丁目駅の、6号出口へ向かう途中の階段の踊り場。Osaka Metroを利用するために店前を歩くだけでも、店内で流れるジャズの音色がかすかに耳に届いてきます。
長谷川さんがサックス奏者としてステージに立つこともある。
そんなSUBで聞かせてくれるのは、レコードから流れるジャズも、ライブで演奏するジャズも、長谷川さんの大好きな楽器中心のモダンジャズだけ。ジャズ以外のジャンルの音楽もとり入れるお店が多い中、「僕にはこれしかできないんです(笑)」と、長谷川さんは話していますが、“しっかりとしたジャズを聞かせてくれる”と、ジャズファンたちからの信頼を集めていることは、言うまでもありません。
お店にストックされている、ジャズの名盤はまさにお宝!
SUBについて、「なかなかおもしろいことをやっている」と話していた吉川さん。その一つが、夜のライブ営業に加え、焼き菓子などを提供するカフェタイムの営業をスタートさせたこと。店内のインテリアも、たばこの煙がたちこめるジャズクラブのイメージから、明るく入りやすい雰囲気にチェンジ。若い世代や女性の来店客が増え、「“ジャズのことはよく知らないのですが、興味があって”と、お店を訪れてくれたお客様もいました」
もう一つが、長谷川さんがプロデュースする『Osaka Jazz Lives!』のとり組み。こちらではSUBを飛び出して、ジャズの生演奏が気軽に楽しめるライブやイベントを開催しており、2022年4月17日(日)にも、ギターにスポットを当てたジャズライブが、クレオ大阪中央(大阪市天王寺区)にて行われる予定です。
「いろいろな切り口で、“ジャズはハードルが高い”というイメージを変えていければと思っています。より多くの方に、ジャズを楽しんでもらえたらいいですね」
「マフィン」(350円~)は、サックス奏者でもある奥様の手作り。コーヒー(500円)とセットでオーダーすると50円引きになる。
★マニアさんのおすすめポイント★
きちんとしたジャズを聞かせてくれる店。SUBが発信するさまざまなとり組みにも注目です。
[jazzbar_05]店舗情報
【編集後記】
コーヒーショップやカフェなどの飲食店でも、BGMとして、ジャズを耳にすることがたくさんあります。くつろいだ大人の雰囲気を演出してくれるジャズ。生演奏で聞いたら、もっと迫力があって素敵なのだろうなぁ~と、ワクワクしながら取材メモをまとめていました。ところで、吉川さんの今年のテーマは「朝ドラの“On The Sunny Side Of The Street(邦題:明るい表通りで)”のように、コロナが落ち着いたら余計な悩みは捨てて街へ出よう」ということだとか。みなさんも行ってみたいと感じたお店に、気軽に足を運んでみてください。
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