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公開日2021.02.10

紹介してくれるマニアさん

坂道研究家辻本伊織さん

2013~2018年 大阪府立大学客員研究員。大阪の坂道研究に打ち込み、フィールドワークで踏査した坂道は約300例。大阪に存在する無名・忘名の坂道に命名し、自然景観から観光資源へと止揚させる取組みも実施。

大阪・上町台地周辺にある魅力的な坂の数々

“水の都”と形容される大阪市。太古の昔はともあれ、現在では水とあまり縁のないエリアも大阪市内に存在します。例えば中央区南部・天王寺区・阿倍野区・住吉区北部。周辺には上町台地と呼ばれる、大阪城から南へ幅約2km、南端の大和川まで距離は13kmの細長い台地が形成されています。上町台地付近には深い歴史を刻んだ7つの坂道を総称する“天王寺七坂”をはじめ、数多くの坂道が存在します。それらの坂道を実際に登ってみるといろんな情景に心が動かされるのです。坂道で遊ぶ子どもたちのにぎやかな声、近隣の寺院から漂う線香の香り、四季によって色を変える草木、風情のある石畳。そして、坂の上から見下ろせば夕日に染まる街並み。五感で感じる一つひとつの要素が、ノスタルジックな世界へと誘ってくれます。

  • ※当サイトにて記載の営業時間については、通常業務の時間となります。詳細は各店舗・スポットにてご確認ください。
目次

そもそも坂道とは何か?

坂道を研究していくなかで見つけた「坂道の定義」は5 つ。
①あくまで道としての機能を持つ
②傾斜した道
③単なる山や丘の斜面は除外
④人が上がり下がりできない崖状などは除外
⑤形状としては階段状も含む。
なかでも良い坂道の条件は、景観・見晴らしのよいものだったり、急傾斜や曲がりくねっていたりと形状に特色があるもの。坂の途中で茶店があれば尚良いでしょう。

あなたも無名坂・忘名坂を探す旅に

これまで深い歴史を刻み、数多くの人々が行き来した情緒あふれる坂道。しかしながら、大阪には名前があった痕跡がない名無し坂、名前を忘れ去られた忘名坂も少なくありません。世間に知られていないからこそ自分で見つけ出す楽しみもある、まさにマニア向けのジャンルと言えるでしょう。

石畳続く緩やかな傾斜…文豪の愛した【口縄坂】

ノスタルジックな風情に魅せられて

下から見た口縄坂。蛇の腹のようになっている。
坂道を見上げると蛇の腹にも見えることから蛇(くちなわ)のようだとも、大阪城築城の際に縄打ち(測量)を始めた地であるとも言われている口縄坂。松屋町筋を一歩入ると趣深い石畳が緩やかな傾斜で延び、急な石段へとつながっています。幅と奥行きが広く低めの石段は、まるでゆっくりと坂を味わってと言わんばかり。
静けさが心地よい口縄坂を登った先には、大阪生まれの作家・織田作之助の文学碑があります。坂の雰囲気によく合う佇まいのこの碑には小説『木の都』の一説が刻まれていて、読んでから坂を歩くと景色がぐっとドラマティックに。文豪が愛した坂に思いを馳せながら歩いてみるのも楽しみ方の一つです。
織田作之助『木の都』の一節に口縄坂が登場する。
坂の上にある石碑には、「大阪は木のない都だといはれてゐるが・・・・・・」から始まる織田作之助『木の都』。大阪の下町の情緒をしっとりと描いたこの作品に、口縄坂は登場します。このように、文学や歴史の情景に触れられるのも坂道探訪の魅力。また付近の浄春寺や梅旧院、太平寺には大阪の著名な先人の墓が鎮座しています。松尾芭蕉の墓も、大阪出身の彼を慕う人たちの手によって同エリアに建てられました。
松屋町筋から一歩入ると風情が漂う口縄坂へ。
東西に延びるこの坂は、登るときには空に抜けるよう。一方で、降りる際には時間によって夕日で色付く街並みを見ることができるかも。周囲には寺院が多くノスタルジックな雰囲気を醸し出している口縄坂は、傾斜も風情もあり坂道としての魅力は満点。坂の名所“天王寺七坂”の一つとされているのにもうなずけます。

★マニアさんのおすすめポイント★
階段の上にある織田作之助の石碑や、坂としての風情が抜群!
[hill_01]店舗情報

大阪のショートトリップを味わえる【学園坂】

坂のスケールはマニア必見!

幅の広い自転車道が印象的な学園坂。
学園坂を目にしてまず驚くのは、4分割されていること。歩道、自転車道、車道、そしてまた歩道。黄色の車道と赤色の自転車道がなんとも特徴的な坂道です。310mにも及ぶ長い坂では、それぞれが安心して通行できるよう設計されています。1937年(昭和12年)の都市計画として新設された坂で、当初は「夕陽丘新道」「夕陽坂」と呼ばれていました。そこから、大阪夕陽丘学園(旧 大阪女子学園)に隣接しているため、いつしか学園坂の名前が定着したそうです。谷町筋の六万体交差点から松屋町筋の学園坂交差点までをつないでおり、同エリアでも新しくできたほう。写真映えする景観で、青春ドラマに出てきそうな坂道です。
夕陽に照らされて昼間とは違った雰囲気に。
夕闇が迫ってくると、学園坂も橙色に照らされて情緒ある印象に。谷町側の大通りから学園坂を進んでいくと、学園横を通り、寺内町の落ち着いた雰囲気へと変化していきます。そこからは都会の喧噪から離れ、下町情緒が魅力の松屋町へ。大阪がもつ様々な顔をショートトリップで楽しめます。
S字カーブと道幅がスケールの大きさを醸し出している。
マニア垂涎のポイントは、なんといっても坂道としてのスケール。左右に大きく曲がるダイナミックな設計は大阪の町中ではなかなか見られません。この大きなカーブに加え、学園坂は公式で認められているなかでも比較的長い坂道であり、このスケールを作り出している重要なポイントともいえるでしょう。
また、道幅がないと実現できない自転車道は、歩行者や自動車との事故や路上駐車も防止できるのだとか。ただし、谷町筋から自転車で下る際はスピードの出し過ぎにご用心を!

★マニアさんのおすすめポイント★
安心して歩行できる坂道設計。この優れた設計を、坂のスケールの大きさと一緒に楽しめます!
[hill_02]店舗情報

縁結びのパワースポット【相合坂】

坂から続く高津宮境内散歩もおすすめ!

相合坂の北側にある「男坂」。
「高津(こうづ)さん」の愛称で親しまれる「浪速高津宮(こうづぐう)」の境内には、いくつかの坂道があります。そのなかで、縁結びの坂と言われているのがこの「相合坂(あいおいざか)」。境内に続く石段は、南からまっすぐ伸びる「女坂」と、北からひと曲がりする「男坂」から成り立っています。それぞれの坂から同時に登り始め、登りきった踊り場の真ん中で出会うと相性が良いと言われているのだとか。
石段の両端に建てられた石柱には、大阪の歌舞伎役者や大企業の名前がずらり。男女の縁だけでなく、人と人、企業と人とも結んでくれる“良縁の坂”としても知られています。戦災に耐えた石玉垣と最近新たに建てられた石玉垣のグラデーションが歴史の長さを感じさせてくれ、一歩一歩踏みしめて登りたい坂道です。
横から見ると二等辺三角形になっている相合坂。
見た目にも楽しめる相合坂は、横から見ると二等辺三角形になっています。また、境内も石段も子どもには絶好の遊び場。放課後を迎えた子ども達の笑い声が響く高津宮は、大阪の下町風情を色濃く感じられるスポットです。
女坂から見た「縁切り坂」。
縁結びのパワースポットとなっている相合坂ですが、女坂の向かいには悪縁を絶つ坂としてひそかに知られる「縁切り坂」もあります。明治初期までは坂の形状が三下り半になっており、こう呼ばれるようになったそう。当時は女性から男性へ別れを告げることは好ましくないこととされていたため、縁を切りたいと願いながらこの坂を下りる女性もいたようです。縁切り坂を下りてから相合坂で新たな縁を願うのも、この坂道ならではの楽しみ方です。
神輿庫の天井に鎮座する、鋭い眼光の瓦製の龍。
坂道を登った後は、境内を散歩してみるのもおすすめ。高津宮の境内には、戦火を免れた貴重な神輿庫(しんよこ=神輿の格納庫)も。入り口の天井には、瓦製の龍が眼光鋭くとぐろを巻いており、まるで神輿を守っているかのよう。龍は水を司るとも言われているため、神輿庫を戦火から守ってくれたのかもしれません。

★マニアさんのおすすめポイント★
縁結びと聞いたら行くしかない!坂の石柱には知っている名前もちらほら見られますよ。
[hill_03]店舗情報

好奇心くすぐる、街中に突如現れる【直木坂】

地元に親しまれる“ええ塩梅”な坂!

生活拠点と街を結ぶ便利な坂で、人が行き交う直木坂。
元々、直木坂は名前のない坂でした。ただ、直木賞の由来にもなった大阪出身の小説家・直木三十五の生家が近辺にあることから、坂道アンバサダーの辻本さんが「直木坂」の名を命名し、じわじわと広まっていきました。大阪にはほかにも名前のない坂も多いなか、名付けられるのは珍しいケース。偉大なる作家がこの地で思案に耽っていたかもと想像すると、より風情が感じられそうです。
道筋は交通量の多い長堀通から、住宅の多い安堂町のエリアへ。やや急な坂道ですが、自転車で下る人がいたり駆け足で登る親子がいたり、地元の方々に親しまれています。坂の上には、白蛇を祀る「榎木大明神」の社と樹齢670年超とも言われる槐(えんじゅ)の木が登場。この樹木を榎木と間違えたために「榎木大明神」と名付けられたのだとか。
直木三十五『南国太平記』の一節。リズム感のある文章が心に響く。
坂道の途中にある石碑には、直木三十五の代表作『南国太平記』の一節が刻まれています。スピード感のある文体は、この坂道の傾斜を思わせる仕上がり。また、直木坂から徒歩3分の場所には「直木三十五記念館」も。直木賞作家たちの呼びかけもあり、2005年に建設され、直木賞のルーツをたどる館として親しまれています。
街中に突如現れる直木坂。登ってみたいと好奇心をそそられる。
街の中に突如現れる石段は、車の多い通りから切り離されるようで好奇心をそそられます。坂を下りてまっすぐ進んで行くと、活気溢れる「空堀商店街」へ。最近は、雑貨屋や昭和初期の長屋を改装したカフェなどが続々とオープンし、観光スポットとしても注目されています。空堀商店街も坂の多い商店街なので、直木坂と一緒に訪れてみるのもおすすめです。

★マニアさんのおすすめポイント★
街中に突然現れる驚きが!直木賞にも通ずる味わい深い坂です。
[hill_04]店舗情報
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