のどで感じる、こだわりの一杯 オオサカコーヒーマニア のどで感じる、こだわりの一杯 オオサカコーヒーマニア

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公開日2022.10.07

紹介してくれるマニアさん

濱田 浩司さん

19歳の時に、大阪市福島区にカフェオールドキャプテンをオープン。純喫茶しかない時代にエスプレッソマシンでコーヒーを淹れる本格的、かつお洒落なスタイルを紹介し、話題を呼んだ。その後、両親が経営するハワイのコーヒー農園を手伝い始め、ハワイの名産コナコーヒーの豆やドリップパックを販売するリルジーンファームジャパン株式会社を設立。実際の栽培を通して学んだ、コーヒーに関する正しい知識や文化を広く伝えることに使命感を抱いている。

未知の味わい、本物のコーヒーはいかが?

家、街中、自販機。今やコーヒーは、どこででも飲める飲み物です。けれど実は、世界的に見て日本はコーヒーへの理解度が低い国だということをご存知でしょうか。その理由は、例えばケーキ店やレストランなどフード類が主体の店で脇役として扱われることが多いから、また、お洒落なイメージや流行感など雰囲気優先で語られがちだからです。そこで、実際にコーヒー農園を経営し、豆の販売店を立ち上げた私が「本物の美味しいコーヒーを味わえる」おすすめの店を紹介します。大阪は西日本一の大都市。人も多ければ店も多いこの街で、プロの目が選ぶ誤魔化しのない1杯に出会えたことに喜んでもらえるはずです!

目次

約50年の歴史はここから。関西を代表するコーヒー専門店

雰囲気抜群のレトロ空間でスペシャルティコーヒーを

大阪府と兵庫県に約20軒の店舗を展開するヒロコーヒーの本店がこちら。2022年に創業46年目を迎えて、飲食店が立ち並ぶ江坂駅前界隈でも老舗の一軒に数えられる店です。
店で使うコーヒー豆は常時約20種類を揃えていて、なんと全種類スペシャルティコーヒーです。肉で例えるとA5ランクに等しい、全コーヒー豆のうち上位5パーセントにあたる品質の高い豆を厳選して仕入れています。その味を説明すると、「コーヒーと言えば単純に黒くて苦いという固定観念を持つ方がいらっしゃいますが、ハイグレードの豆を使うと、酸味はやさしい加減で、後味はすっきり、さらに胃にもやさしい味わいになります」と店長の三輪さん。
豆に対するこだわりは強く、スペシャルティかつその7割がサステイナブルコーヒーで用意、つまり、オーガニックやフェアトレード商品で地球環境への配慮なども十分。それらを高性能の焙煎機で焦がさないようにじっくり火を入れることで、果実である豆が本来持つフルーティな酸味や、焙煎により加わるキャラメルのような風味がしっかり引き出されます。抽出は創業以来変わらないサイフォン方式で、ガラスに美しく液体が満ちる風景を見るために、わざわざカウンター席に座るお客様もいるとか。コーヒーは飲みやすいブレンド、各豆の個性が際立つシングルオリジン、フロートやカフェオレを楽しめるアレンジ、といったメニューで展開しています。どれも美味しいけれど、初めての方には焙煎所が位置する猪名川エリアの四季をイメージした「オーガニック・ブレンド・いながわ」(カップ550円、ポット715円)をまずおすすめします。オーガニック認証を受けた豆で作るコーヒーは、コロンビアのナッツ風味、グァテマラの甘味、メキシコの爽やかな酸味が一体化したマイルドで飲みやすい味わい。
また、コーヒー以外のフード関係のメニューの豊富さにも定評があり、サンドイッチやサラダなどの軽食類や、チーズケーキなどのホームメイドケーキが揃い、値段も手頃です。軽食やスイーツのメニュー開発のポイントは「店のコーヒーによく合うもの」だそう。
老舗店としてサイフォン抽出に限らず他の面においても創業以来の持ち味を大事にしています。例えばレンガを基調にした重厚な内装は昔ながらの純喫茶のイメージです。照明が暗めの店内にステンドグラス越しの光が控えめに差し込み、リラックスできることこの上なし。日常の喧騒を忘れて、一息ついてください。
★マニアさんのおすすめポイント★
レンガ造りの店内はレトロな雰囲気で、落ち着いた時間を過ごせます。サイフォン式で淹れるコーヒーは、味わい深くかつ飲みやすく、種類も豊富。隣に系列の豆の販売店があり、様々な商品を買えるので自宅でもぜひどうぞ。
[coffee_01]店舗情報

文化発信地・ミナミならではの本格かつお洒落なカフェタイムを

プロのバリスタが笑顔で出迎えてくれる!

心斎橋駅からすぐ、日航ホテルのすぐ裏手の便利な場所に位置する心斎橋焙煎所。アメリカ村を訪れた若い人はもちろん、御堂筋付近のブランドショップやデパートでショッピングを楽しむ落ちついた年代の人も立ち寄る幅広い客層を掴んでいる店です。
店は2階建てで、1階は販売店とオーダーカウンター。カウンター越しに焙煎機などが並ぶ作業場が見えて雰囲気たっぷりです。また、2階は約20席を設けたイートイン用カフェON THE TABLE。ウッディなインテリアで統一された自然光が差し込むお洒落な空間で、のんびりくつろげます。
コーヒーはスペシャルティコーヒーを中心に約15種類の豆を取り扱う。生豆を店内で一から焙煎。浅煎りで豆本来のフルーティな風味を残したり、深煎りで苦味のバランスを取りながらコクを出したりと各豆の持ち味を引き出します。そして、仕上がった豆でコーヒーを淹れるのが、3名が在籍する国内トップクラスのバリスタです。
「器具やカップを十分に温めて、ペーパーフィルターは香りの妨げとなる紙の臭いを取るため、あらかじめ湯通ししておきます。浅煎りの豆は味が出にくい傾向があるので、しっかり引き出せる92度の高温の湯で抽出、また深煎りの豆は雑味と渋味が出ないように85度の湯を使います」とバリスタの山坂さん。豆と焙煎に精通したプロが丁寧なハンドドリップで淹れるコーヒーを一度は味わってみたいところ。コーヒーや豆に関する質問にも親切に答えてくれます。
おすすめの人気メニューはまず「カフェラテ」(473円)。濃厚なエスプレッソにミルクを加えてまろやか、かつ奥深い味に仕上げています。ホットで注文すると、競技会ラテアート・グランプリのチーム戦で準優勝を獲得したバリスタによるアートが描かれ、美しさに息を呑みます。また、ミルクなしの一般的なコーヒーなら「コロンビア(ラミナ)浅煎り」(550円)がおすすめ。世界で最も有名なコーヒー品評会、カップ・オブ・エクセレンスで入賞したハイグレードなコーヒーで、アプリコットやプラムなど豊かな果実味を感じられる特別な味です。
若者の街らしく話題のスイーツも用意していて、「バスクチーズケーキ」(880円)は評判の一品。とろっと濃厚で、こんがり焼き上げた外側となめらかな内側の食感の違いも楽しめます。エスプレッソ風味のクリームと岩塩が添えられていて味のアクセントをプラスできます。そして、ちょっと面白いのが、たい焼きの店「福八」を併設していて、各種たい焼き(216円~)を食べられるところ。砂糖を控えたやさしい甘さのたい焼きは、実はコーヒーと相性ピッタリ。甘さとほろ苦さのハーモニーにリピートしたくなるかも。
★マニアさんのおすすめポイント★
プロの焙煎士とバリスタが在籍。希少価値の高い豆を使った極上の1杯を味わえます。ミナミらしい、カジュアルかつハイセンスな店の雰囲気もいいですね。夏には、常連客も驚く季節限定の「水出しコーヒーのゲイシャ100%」もお試しあれ。
[coffee_02]店舗情報

まだコーヒーが珍しかった時代に一から道を切り開いた名店

腕利きの職人が丹念に深煎りして作り出す濃厚な味

ミナミエリアの中心部、千日前通りから少し入った角地で目立つシンボリックでレトロな店構え。昭和9年創業、今では全国に広がる丸福珈琲店の本店です。言わずと知れた名店で、まだコーヒーが一般的な飲み物でなかった約90年前の時代に、創業者が生み出したオリジナルな味を提供し続けています。
コーヒーの特徴はまず「深煎りの極み」と言える濃厚な味。強い苦味と深いコク、それでいて後味はすっきりして美味しくいただけます。多くの人を惹きつける味の秘密は、機械ばかりに頼らず高い技術を有する職人が、その日の気温や湿度に合わせたやりかたで手作業をするからとか。
「時代に合わせて使用する豆の種類は変えますが、常に安定した品質を保ちます。仕入れた豆はまず不要部分を排除する研磨という作業を行い、次に職人が釜の横に張り付いて温度を確認しながら丁寧に焙煎します。何度も豆を確認しながら、ここぞというタイミングで火を止めて仕上げます」と本社広報の伊吹さん。豆ごとに焼き上げの濃淡をチェックしてブレンドすることで、味の深みが増すそうです。そのように手間暇かけて完成させた豆を、創業者が考案した専用ドリッパーで変わらず抽出し続けているのもこだわりです。
気になるメニューは、コーヒーは一種類の「ブレンド」(ホット・アイスとも590円)のみ。雑味のない上品な香りや苦味を楽しめますが、若干濃いめだと感じる方に向けて、まろやかな口当たりの「カフェオレ」(ホット・アイスとも640円)や、お湯の割合を増やして飲みやすくした「アメリカン」(590円)「ダブルアメリカン」(590円)といったメニューも用意しています。
また、店のもう一つの看板メニューが「こだわり卵のホットケーキ」(740円)です。オーダーが入ってから熱が均一に伝わる銅板で一枚一枚丁寧に焼き上げます。二段重ねでバターと蜂蜜またはメープルシロップが添えられたクラシックなスタイル。外はサクッと香ばしく、中はふんわりした食感。やさしい風味で濃厚なコーヒーとの相性抜群。
創業者自身が設計に携わった店は150席の広々としたキャパシティで個室もあり。外観と同様に店内も内装や調度品に工夫を凝らしたレトロな空間。皮張りのソファは座り心地が良く、アンティーク風のシャンデリアは優しくテーブルを照らします。カップボードに大倉陶園などの美しいカップが飾られていて、コーヒータイムのムードがより高まります。
★マニアさんのおすすめポイント★
超有名なコーヒー店の本店。重厚な店構えが目を引きます。特製のドリッパーを使って職人技で抽出するコーヒーは、とろりとした濃厚なコクと香りが特徴。ほどよい苦味と透き通ったような後味に何度もリピートしたくなります。
[coffee_03]店舗情報

多くの飲食店の発展にも貢献してきた二代目社長の創意工夫が光る

ブラジルコーヒーの真髄を味わえる「手摘み完熟豆B4」

1963年にコーヒー豆の卸販売店としてスタートした島野珈琲。当時はレストランや喫茶店といった飲食店が主な取引先でした。そして、2006年に創業地の北区から現在の平野区に移転。それを機に小売と併設カフェの運営もスタートし、一般消費者も気軽に美味しいコーヒーを楽しめる店に。店内に並ぶ販売用の豆は30種類以上。ハイグレードのスペシャルティから、買いやすい手頃な商品まで幅広く取り揃えています。扱う豆の種類が多いから、焙煎機も大型機と小型機を使い分けて、常に新鮮な豆を提供しています。
数ある豆の中でもぜひ試して欲しいのが、卸の4割、小売の6割のお客様からリピート注文が入る「手摘み完熟豆B4」(250g1560円)です。「ブラジルの契約農家から仕入れるスペシャルティコーヒーで、機械を使わず職人が一つ一つ目で確認しながら、完熟かつ上質の豆を手摘みしています。吟味した豆は苦味と酸味のバランスが良く、ほのかに広がるチョコレートフレーバーが特徴。たくさんの方に美味しいと言っていただける味です」と代表の島野さん。
ブラジルの契約農家の豆で作ったコーヒーを最初飲んだ時、「昔ながらの本物のブラジルコーヒーの味だ!」と感動したそう。しかし、すぐに契約できたわけでなく、まず、2年間、決められた量だけを供給してもらい、地道に販売して農園との信頼関係を築くことができてから、本契約に至りました。豆にかける情熱がNo.1のヒット商品へとつながりました。
店内で販売している豆は、併設のカフェB4 Cafeでイートインでも楽しめます。選んだ豆をその場で挽き、淹れてくれるスタイルで、「手摘み完熟豆B4」は350円、その他の豆はすべて一律400円と抑えた値段設定です。特に手摘み完熟豆B4に関しては看板商品を多くの人にPRする目的もあり、より手頃な値段にしたそうです。また、カフェではコーヒーに合うフード類も用意しています。メニュー数は多くないけれど、コーヒーと同様に材料にこだわっています。国産小麦と米粉を独自ブレンドして生地を作り、米油100%で揚げる「手作りドーナツ」(150~180円)はざっくりとした素朴な食感で食べ飽きません。売切れ状態になることもある人気商品です。また、高級食パンを使う「フレンチトースト」(400円)や「ピザトースト」(380円)も食べ応えあり。
最寄り駅の八尾南駅は市内でも郊外に近いエリア。ゆったりした空気が流れているので、のどかなショッピング&カフェタイムをどうぞ。
★マニアさんのおすすめポイント★
老舗の会社が運営するカフェ併設のコーヒー豆販売店です。世界各国のコーヒーが揃う中で、特に飲んでほしいのが看板商品の「手摘み完熟豆B4」。後口に広がるチョコレートフレーバーと、苦味と酸味の優れたバランスに感動するはず。
[coffee_04]店舗情報

心を込めてドリップ、そして音と空間が織りなす特別の時間

毎月の出会いが楽しみなブレンドコーヒー

細路地が細かく走り、個性ある小さな店がひしめきあう大正駅の駅前。その一角に溶け込む井尻珈琲焙煎所は、遠方から足を運ぶ人も多い知る人ぞ知るコーヒーの名店です。
「元々、会社員時代に夜、音楽を聴きながらコーヒーを飲む時間が好きで、ある時、手網を使って自分で焙煎を始めました。コーヒーって煎った後すぐに味の具合がわかりますよね。昔から結果が早く出るものが好きだったので、ハマりました。それで自分好みの豆を色々作って、余った分を友人たちに分けていたら、色んな人から『私にも売って欲しい』と声がかかりました」とご主人の井尻さん。口コミで評判になった豆を、最初は友人知人、また、SNSなどを通して販売。次に期間限定のマルシェイベントに出店、そして、2016年の春に現在の場所に実店舗をオープンする運びになったそうです。
扉を開くと薄暗い店内にL字型のカウンターが浮かび上がります。加えて、奥にテーブル席が二つ。以前は30年続いた喫茶店だった物件で、店を始めるにあたり、改装したそうですが、今もどこか懐かしい風合いに満ちた空間です。
コーヒーのメニューはその時の店主の気分で豆を選ぶ「月替わりのブレンド」(ペーパー、ネルどちらも500円)と、カフェオレにした「ミルク珈琲」(ペーパー500円、ネル600円)のみ。あとは焼き菓子などの「本日のデザート」(300円)です。コーヒー類はペーパードリップとネルドリップから好きな抽出方式を選べます。オーダーが入ると、沸かした湯をポットから細く静かにドリッパーに注ぎ、じっくり時間をかけて豆を十分に膨らませて丁寧に抽出、カップへ注いでくれます。一連の作業はまるで神聖な儀式のようで目で追うかもしれません。使用する豆の種類についてあえて言及しないのは「ご来店いただいたお客様には、深く考えずリラックスしてコーヒーの時間を楽しんでほしいから」と。その通り、深くまろやかな風味に癒されるネルドリップ、さらっと口当たりの良いペーパードリップ、どちらも幸せな時間へと導いてくれます。
BGMは、音楽好きの井尻さんがセレクトするジャズやソウル、アンビエントミュージックといったジャンルの音楽。ターンテーブルばかりか、カセットデッキまで設置して、空間を満たす音を不足なく流せるようにしています。店内には棚がいくつか置かれていてコーヒー豆の他にCDや書籍類も販売。思わぬお気に入りの一点が見つかるかもしれません。
「コーヒーは特別なものでなく日常的なもの。店にはその人らしい“余白”を作りに来てほしい」と井尻さん。余白って何だろう? 時間か空間か、それとももっと別の何か? 飲み終わる頃に答えが見つかるかも知れません。
★マニアさんのおすすめポイント★
コーヒー1杯を飲むことに集中できる、深煎り珈琲がおすすめのお店。ネルドリップとペーパードリップを使い分けて1杯1杯、丁寧に淹れてくれます。口に残る余韻は、苦味と甘味。苦味がまろやかで、まるでカカオのようなコーヒーを楽しめます。
[coffee_05]店舗情報
【編集後記】
チェーン店から個人店までさまざまな名店を紹介させていただきました。初めて聞く店以外に、すでにご存知の店もあったかもしれません。しかし、「いつも飲んでいたおなじみのコーヒーにこんな工夫がされていたなんて!」と、新鮮な驚きを感じたと思います。豆を選んで焙煎して挽いて淹れる、と言葉で工程を語ると至ってシンプルなコーヒー。しかしそこから無限の風味が生まれます。その奥深さは一生かかっても学びきれない気がします。近くて遠い魅力の尽きない飲み物ですね。
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