オーナのセンスのクセが強い! オオサカ個人書店マニア オーナのセンスのクセが強い! オオサカ個人書店マニア

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公開日2020.10.30

紹介してくれるマニアさん

本屋ライター和氣正幸さん

本屋を応援する活動BOOKSHOP LOVER主宰&棚貸し本屋BOOKSHOP TRAVELLERの管理人。著書『東京 わざわざ行きたい街の本屋さん』(G.B.)『日本の小さな本屋さん』(エクスナレッジ)など。

驚くほどに個性が際立つ独立書店に注目!

本屋が少なくなっていると言われている陰で、独立書店と呼ばれる個人や小規模で運営される本屋が増えているのをご存知でしょうか。「本屋なんてどこも同じでしょう?」と侮るなかれ。店主やスタッフの個性が滲み出た他にないお店になっているのです。
写真集などアートブック、詩集や歌集、文学、専門書、さらには流通量が少ないZINE(ジン)やリトルプレスと呼ばれる自主出版本などが、限られたスペースに効果的に並べられています。そのせいか大型書店では気が付かなかった、個性的な本と出合うこともよくあります。最近では特に20代~30代の若い店主が店を始めることも多く、本屋巡りを趣味にする人も徐々に増え始めています。中には本屋を目当てに旅をする人もいるほどです。

  • ※当サイトにて記載の営業時間については、通常業務の時間となります。詳細は各店舗・スポットにてご確認ください。
目次

若い世代がつくる独立書店が増加中

大阪の独立書店の中では老舗と呼べるようなお店を中心に、20代~30代の開いたお店や、専門書店を紹介します。全体としてはお店を始めやすい 古本屋が多いですが、新刊書店を開く人も少しずつ増えてきた印象ですね。小さい本屋といえば古本屋が当たり前だった時代が長かったのですが、今後は新刊を中心にする本屋も増えていきそうです。

新たなトレンド〝棚貸し本屋〟は注目度大!

一つのトレンドとして、古本屋「書肆七味」のような〝棚貸し〟という形態があります。棚貸しとは、本棚や箱などの小さなスペースを間借りして、誰でも本屋のまね事をできるシステム。東京 を中心に広まりつつある手法ですが、一箱で“本屋ごっこ”ができるこのスタイルは、本屋になりたい人が練習をするのにベストな方法です。本屋全体の数がほぼ間違いなく少なくなっていくだろう中で、小さくても本屋の芽を増やすための土台として、棚貸し本屋の今後には大きく期待しています。ユーザーにとっても、おもしろい間口が広がり、予想外の本との出合いも期待できますよ!

個人書店の醍醐味!テーマ特化でマニア心をくすぐる

夜な夜な詩歌好きが集い、靴を脱いでくつろぐ専門書店

日本を代表する詩人の作品を集めた『現代詩文庫』。中には入手困難な一冊もあるそう。
占いや古着屋などが入る雑居ビルの一室にある、詩歌を専門に扱う書店。日中は勤め人の店主が、週に3日だけライフワークとして開けるお店です。短歌や詩、川柳、俳句の専門誌や作品集を目当てに、19時の開店とともにお客さんが続々とやってきます。20代や30代の若い人が多く、仕事や学校帰りにふらりと立ち寄る憩いの場。短歌や詩の世界が好きな人はもちろん、言葉を仕事にするコピーライターや編集者なども足繁く通うとか。著名な作家の作品集をはじめ、若手作家の作品集や自費出版の制作物もあり、クリエイティブな刺激に溢れています。
現代俳句の俳人として注目される、佐藤文香の句集。
「俳句は難しそうで敷居が高いイメージですが、時代と共に変化しているんですよ」と店主の池上さん。実際に本をめくるとたしかに納得。現代社会や今を生きる人たちの心情を、今の言葉で読む句は素直におもしろいものがたくさん。手の込んだ装丁やデザイン性が高いものが多く、ハマっていくのも納得です。
自宅のようにくつろいでほしいからと、店内は靴を脱いでリラックス。
「ちょっと自分には難しそう…」と思っているビギナーさんもご安心。相談すればオススメをピックアップしてくれるので、つまみ読みしながらじっくり選べます。めくるめく言葉の世界にぐいぐいと引き込まれる、詩的な時間に浸ってみては。

★マニアさんのおすすめポイント★
中崎町の一角、サクラビルという一部屋ずついろんなお店が入っているビルの一部屋にある本屋。全国的にも珍しい詩歌の専門本屋です。靴を脱いで入るのもおもしろい。
[bookstore_01]店舗情報

とっておきのアートな一冊に出合える!

アート×本が融合する大阪屈指のブックカフェ

取材に訪れた日は、有持有百(ありもち・ありも)の『立つ人展』を開催。展覧会の予定はWebサイトをチェック。
入り口を入ってすぐはギャラリースペースになっていて、本とアートが融合する空間が楽しめるブックカフェです。日常の中でアートや芸術と触れられる場所として、遠方からも多くのお客さんが足を運びます。写真家・長島有里枝による待望の作品集『Self-Portrait』(サイン入り)など、アートブックを中心に食や旅、建築など個性豊かな一冊がズラリ。ZINE(ジン)やリトルプレスの扱いも豊富で、国内だけでなく海外のものも独自に仕入れています。
レコードをかたどったり、ポップな色使いなど、どれもユニークなインドネシアのZINE。
海外モノの中でも、ちょっと他ではお目にかかれないのが、インドネシアの出版物です。インドネシアで地元の本屋を巡っていた時に出合ったそうで、一目惚れして直接仕入れるようになったのだとか。美しいイラストとレイアウトが独創的なビジュアルブックや、インドネシアのビルを集めた写真集など、その芸術的なセンスには目を見張るばかりです。
お客さんの顔を思い浮かべながら厳選される本は、どれもちょっとマニアックでそれが良い感じ!
旅好き店主のオススメは『食べ歩くインド北・東編/南・西編(小林真樹著)』。著者がこれまでに食べ歩いた、インド全土のローカル食堂を紹介する大作です。ほかにも、コーラをテーマに各国を巡る『LOCKET 04 COLA ISSUE』など、日本にいながら旅行気分を味わえる旅本も充実します。
挽きたての豆を丁寧にドリップした、おいしいコーヒーでいっぷく。席では購入後の本のみ読めます。
カフェスペースでは「コーヒー」(450円)や「ほうじ茶」(450円)などのドリンクや、スパイスから調合して作る本格的な「チキンカレー」(850円)を楽しめます。散歩がてら、秋の夜長のお供を見つけに立ち寄ってみて。

★マニアさんのおすすめポイント★
大阪でブックカフェと言えばここ。ギャラリーとカフェも楽しめ、アートや写真、デザインなど、ビジュアルブックが充実。リトルプレスなど、ちょっと変わった本を扱う店です。
[bookstore_02]店舗情報

隠れ家を訪れるような高揚感にワクワク

地下に広がるポップカルチャーのワンダーランド

「どんな一冊に出合えるだろう」そんなワクワク感で胸が高鳴る。
1階カフェスペースの「谷口カレー」が人気で、ランチタイムはサラリーマンでいっぱい。店内奥の細い階段を下りる地下の本屋は、そんなお昼時の混雑が落ち着く13時にオープン。隠れ家のような空間にアートや音楽、映画、食、マンガなどのポップカルチャーから、社会問題や政治に切り込んだ読み物など幅広いジャンルの本が揃います。「お客さんの好みや興味のある本を、自分の直感で仕入れます。その積み重ねが、だんだんとお店の個性になってきました」と、店主の吉村さん。
古本屋として約10年前にオープンし、徐々に新刊の扱いが増え現在は半々くらい。
本だけでなく、雑貨やCDなどがびっしりとディスプレイされています。店内は真四角ではなく、入り組んだ形になっていて「ここには何があるんだろう」と、冒険しているような気分に。月替りのギャラリー スペースや書店員、編集者、ミュージシャンなど100名に影響を受けた本を紹介してもらう企画「肝腎(かんじん)」のコーナーなど、本好きならずとも楽しめる空間です。
「日々の疲れや緊張をほぐしてくれる作品が好きです」と、店主の吉村さん。
写真は吉村さんイチ押しの、人気作家さんの作品です。 左からストーリー性のあるイラストが印象的な『イケガミヨリユキ作品集』。中央はタイ出身のイラストレーター・ウィスット ポンニミットの『マムアンちゃんカレンダー』。毎年売り切れる人気商品なので、早めにゲットしたいですね。最後は、京都在住の人気漫画家・スケラッコの新作『バー・オクトパス』。
リトルプレスやZINEも豊富に揃います。
大型書店では扱いが少ないリトルプレスなど個人の出版物は、作り手のこだわりやメッセージを感じられる一冊ばかり。隙間なくディスプレイされた棚から、お気に入りの一冊を見つけるのは宝探しのようでたまりません。

★マニアさんのおすすめポイント★
オフィス街ということもあり、地下の本屋に気が付かないこともあるそう。地下の品揃えは良い感じにサブカルチャーで、ごった煮でありながら品の感じられる良いお店です。
[bookstore_03]店舗情報

地元の文化交流も担う、新たな「町の本屋」スタイル

親子で楽しめるアットホームな町の本屋さん

絵本が多く並び可愛らしい雰囲気の店内。
活気あふれる駒川中野商店街のメインストリートから、一本脇に入ったところにある地元に愛される本屋さん。店主の田中さんは、2018年に惜しまれながら閉店した「アセンス針中野店」の元店長。「文化的なものに触れる場所を残したい」と、同年11月に「本のお店スタントン」をオープンしました。扱うのは新刊と古本が半々くらいの割合で、大型書店では埋もれてしまうけれど、多くの人に読んでもらいたい〝良い本〟をセレクトしています。
大人が読んでも楽しい絵本がたくさん。お気に入りの一冊を見つけて!
お店に入って右手は絵本コーナー。『ぐりとぐら』や『はらぺこあおむし』など、ママには懐かしい定番から、ヨシタケ シンスケのユーモアたっぷりの新作まで幅広く並びます。こちらのコーナーには小さなテーブルとイスがスタンバイ。子どもたちが夢中になって絵本のページをめくる姿が目に浮かぶようです。
店内中央には、アートや文芸などの新刊がズラリ。
話題の新作以外にも、昭和を代表する歌人であり劇作家の寺山修司の『ぼくが戦争に行くとき』など、時代が移っても色あせない名作品も。新旧入り混じる書棚には、好奇心を刺激する新しい発見がいっぱいです。他にも、奇想の絵本作家、ショーン・タンの新作『内なる町から来た話』や、インドの出版社タラブックスが手がける大人向けの絵本も充実。
棚貸しコーナーは、各オーナーさんの頭の中を覗いているみたいで楽しい。
奥には古本の漫画やアートブック、雑誌、文芸などが所狭しと並びます。注目は、棚貸しのコーナー。一枠ごとにオーナーさんがいて、古本を出品しています。ちょっとマニアックな本も多く、お客さんからも好評だとか。
他にも、本にまつわる雑貨や文具、アート作品などもあり、文学や芸術、音楽など様々な文化に触れられる場所。絵本の読み聞かせや絵本作家の原画展などイベントも開催しています。詳しくはtwitterにて。

★マニアさんのおすすめポイント★
「アセンス針中野店」で店長を務めていた方が商店街の中に開いたお店。児童書、アート、文芸の新刊を中心に古本も扱います。同じくアセンス出身者がオープンした「toi books 」と共にいま注目しているお店です。
[bookstore_04]店舗情報

〝棚貸し本屋〟のパイオニアが新店オープン!

箱一つ分の個性豊かな小さな本屋が大集合

全部で123箱。箱ごとに「FT書房」や「ぺんぎん書店」など、出品者の屋号が貼られている。
令和2年9月、「あべのベルタ」にオープンしたばかりの古本屋。約40cm四方のサイズに均一に区切られた箱が整然と並ぶ、一風変わった雰囲気の店内が特徴的です。積み重なる箱にはそれぞれ屋号が付いていて、一箱単位でスペースを借りた借主が本を出品しています。本を並べるのにちょうどいい、一箱分の小さな本屋がいくつも集合しているユニークなお店。
この、ちょっと変わったシステムは、2013年にオープンした古本屋「居留守文庫」の一角から始まりました。その後、2017年に本屋をやってみたい人に、木箱一箱単位でスペースを貸し出す「みつばち古書部」をオープン。出品者は日替わり店主として店頭に立つスタイルを確立。流行りの〝棚貸し本屋〟のルーツの一つとして、全国からお客さんが来店する話題のお店です。
店主の岸さんは元演劇人という経歴の持ち主。「創作活動と同様の自由な発想の経営が功を奏し、従来の本屋の枠からはみ出すような、新しいカタチを提案・実践できているのだと思います」と、振り返ります。
店番をする出品者の枠には「只今、店番中」の張り紙が。この日の店番は「ちくわや書店」。
絵本や雑誌、小説、マンガ、写真集…、ジャンルフリーで揃うのもこのスタイルのおもしろいところです。出品者は書店員や古書店、とにかく本が好きな人、自費で本を出版している人など様々。なかには、自費で制作したゲームブックなど、一般書店では手に入らないものなどバラエティ豊かです。
レジ横のワゴンは店番をする店主のフリースペース。本だけでなく、雑貨が並ぶ日も。
店主とお客さんの距離が近いのも魅力。取材中もフランクに会話を楽しむ様子が印象的でした。日替わり店主のスケジュールやプロフィールをWebで公開しているので、ぜひチェックしてみてください。出品者(一箱・500円/月)も絶賛募集中!

★マニアさんのおすすめポイント★
元演劇人の岸 昆さんがプロデュースする古本屋。「居留守文庫」から始まり、現在の棚貸し本屋の源流的な存在の「みつばち書庫部」に続く第3弾の新店です。
[bookstore_05]店舗情報
【編集後記】
ベストセラーではないけれど、店主のセンスと直感でセレクトする、ちょっと珍しくって変わった本に出合える個人書店。老舗の専門書店から話題の棚貸しまで、同じ〝本屋〟でもその特徴は多種多様に広がっていて探索にオススメ!大型書店にはない独自の視点で本の魅力を発信する、個性豊かな個人書店はこれからも増えていきそうな予感です。とっておきの一冊を見つけたり、イマドキな本屋をチェックしたり…新たな楽しみが見つかりそうな”個人書店”めぐりをぜひ!
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